インターステラー (2014):映画短評
インターステラー (2014)ライター7人の平均評価: 4.3
科学度45%の愛が時空を超える叙事詩は宇宙へ高次へと上昇する
ノーラン版『2001年宇宙の旅』は、実に饒舌で愛に満ちあふれ「時間」や「未来」についての想像力を激しくかき立ててくれる。アナログ表現にこだわり視覚的驚異を追求する姿勢には、畏敬の念さえ覚える。難解・荒唐無稽…と冷笑的な声もかまびすしいが、劇中のロボットにあやかれば、これはサイエンス度45%×ファンタジー度55%でファミリーに人類と宇宙への想いを馳せることを促し、映画が豊かだった時代を思い起こさせる究極の“フィルム”だ。『メメント』は前へ過去へ、『インセプション』は内へ深層心理へ、『ダークナイト ライジング』は下へ奈落へと向かった。本作は、外宇宙へ高次元へと上昇する大いなる希望の叙事詩である。
昨年のゼログラ、来年の『火星の人』。ハードSF新潮流!
「どうしてノーランがアルマゲドン?」と不安にさせた予告編。でもフタを開けてみるとゴリゴリのハードSFで驚愕。J.G.バラードを想わせる理不尽な終末風景とオカルティックな発端、最新理論に基づいたという宇宙ヴィジュアル。明らかに『2001年~』を意識したアナログな触覚とクラシカルなアプローチの音楽、そしてアートマン=ブラフマン的思想が父と子のテーマと合わさって見え隠れし、長尺ながら大興奮の連続。アホみたいにシンプルかつ機能的なロボットも、『サイレント・ランニング』や『銀河ヒッチハイク・ガイド』クラスの可愛いさで最高だ。終盤の“本棚”のくだりが丁寧すぎてクドくなったのは惜しいが。
難解そうな題材だがテーマは極めてシンプル
絶滅の危機に瀕した人類を救うため、愛する家族を地球に残して宇宙開拓の旅へ向かう男。C・ノーラン監督らしい時間と空間の独創的な解釈の際立つ本作は、相対性理論などチンプンカンプンな理系門外漢にとって難解な部分も少なくはないが、しかし親子の固い絆に焦点を定めたテーマは極めてシンプルだ。
科学や物理学など人類が長年培った英知をもってしても、到底太刀打ちできない広大な宇宙の謎と神秘。その中にあって、結局のところ唯一確かなものとは人間同士の愛情、つまり魂の結びつきにほかならないのではないかと改めて思い知らされる。個人的には「ローリング・サンダー」のウィリアム・ディヴェインの出演も嬉しい。
しっかり『ゼロ・グラビティ』後のSF映画
『コンタクト』、いや『トランスフォーマー/ニューエイジ』『アルマケドン』なマイケル・ベイ的導入部に驚き。そして、ストーリーが展開すれば展開するほど、その驚きが違う意味で増幅していく。なかでも、明らかにHAL とモノリスをミックスしたTARSとCASEの存在。あのセリフのオマージュもあるが、彼らの『少林寺木人拳』の木人ばりにアナログな動きにはクギ付け! しかも、『インセプション』同様、父子愛がテーマだが、おなじみの“分かる奴だけついてこい感”は薄めで、予習は相対性理論程度で可。とにかく長尺ながら吸引力はハンパなく、ヴィジュアル面でも“『ゼロ・グラビティ』後のSF映画”にもなっているのもスゴい。
ノーラン監督がワームホールの映像化に果敢に挑戦
"重力"と"時間"を研究する科学者が、"愛"もまたそれらと同等の何かなのではないかと問いかける。これが今回のノーラン監督の主題だろう。重力と時間という巨大なモチーフに、人類の存続という壮大なテーマを載せて、それをサスペンス満載のエンターテインメントに仕立てつつ、監督はこれを父と娘のドラマに着地させる。
もうひとつ、監督が果敢に挑戦したのは、まだ誰も見たことがない宇宙規模イベントのビジュアル化。ワームホールの通過、ブラックホールへの突入、時空の特異点から見る光景を、この監督はどのように描くのか。これらの映像は、現時点での最新科学知識に基づいて描かれたとのことだが、さて。
相対性理論やブラックホールを予習して臨むべし
ワームホールやブラックホールの知識が本作の評価を分ける。宇宙空間での時間の超越、さらには時間も空間も超える四次元の存在を信じられるか?
完全主義者のノーランだから起こりうることを想定してドラマを組み立てているだろう。しかし相対性理論の基礎も知らずに見ると、突飛に映るかもしれない。せめて宇宙空旅行がタイムトラベルを可能にする……という概念は理解しておきたい。
とはいえ、そんなSF的な設定が受け入れられれば親子のドラマを十分に体感できる。子どもたちの成長を正常に目に焼き付けられないかもしれない父親の不安が胸に迫る。『コンタクト』のファンにはぜひオススメしたい。
3時間近い長尺を一気に見せる美しい父子ドラマ
相対性理論やキップ・ソーン博士のブラックホール&タイムワープ論など物理音痴な私には難しい側面もあったが、主題である父子ドラマが丹念に描かれているので長尺も気にならず、最後までスクリーンに没頭! ノーラン監督のこだわりが伝わる映像美も美しく、5次元の概念もわかりやすい。ギミックに走りすぎ、人間のエモーションを描くのが苦手と評されていた監督だが、本作では弱点を克服。子供を思う父親の愛情と宇宙にいる父の帰還への期待と諦めが入り交じった子供の心情が如実に伝わる。『ヤング≒アダルト』のヒロインが「愛はすべてに勝つ」と言った時は笑ったが、マシュ―・マコノヒー演じる宇宙飛行士の行動を見れば納得でしょ。