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白鯨との闘い (2015):映画短評

白鯨との闘い (2015)

2016年1月16日公開 122分

白鯨との闘い
(C) 2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED.

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.3

ミルクマン斉藤

メルヴィルの哲学性は期待せぬほうが。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

「白鯨」のモデルとなったエセックス号事件の映画化だが、メルヴィル自身(最近出ずっぱりのB.ウィショウ)が年老いた生き残り船員(B.グリースン)へ取材に訪れるという枠構造を取っていて、この部分の重厚さはなかなか。ただ、物語本編における新米船長と叩き上げ一等航海士の階級闘争的葛藤は「不仲な夫婦」程度にみえ、エイハブ船長のような問答無用の強烈さがない。また船が沈んでからの漂流譚も、なかなか見せはするもののおそらく無数のフィクションがこの事件をイマジネーション源にしてきたせいかも知れぬが想像を超えるものとまでは言えない。ただ19世紀の捕鯨のディテイルと、風をはらんで進む帆船のダイナミズムは堪能できる。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

前作に続き、プライドと友情が激突!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

名作「白鯨」のモデルになった、エセックス号の実話の映画化だが、原題が示すように、決して“白鯨との闘い”がメインではない。体長30m超のマッコウクジラに、船員たちはまったく手も足も出ないのだから。そんな身も心もボロボロな彼らの本当の敵との闘いがひたすら描かれる展開は、好みが分かれるだろう。だが、極限状況に追い込まれた『生きてこそ』にも近いサバイバルな展開の裏で、前作『ラッシュ プライドと友情』でもロン・ハワード監督が描き切ったライバル関係が見事なスパイスに。一等航海士と船長のプライドと友情の行方のほか、巷で問題で下請け会社の苦悩も描かれるなど、かなり胸に迫る人間ドラマに仕上がっているといえる。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

海難事故の凄惨なサバイバルが、名著『白鯨』へと昇華された真相

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 巨大クジラとの勇猛果敢なバトルも、漂流の果ての凄絶なサバイバル劇も描かれてはいる。しかし、名著『白鯨』はいかにして誕生したのかを伝えることが真の命題。取材者メルビル(ベン・ウィショー)が、遙か昔の海難事故を生き延びた生存者ニカーソン(ブレンダン・グリーソン)に真実を尋ねにいく物語の幹に魅せられる。当時最年少だったニカーソンが自然と人間の本性を知り、過去を引きずりながら生きてきた苦悩こそが重要。あの『白鯨』で片足をクジラに奪われた復讐に燃えるエイハブ船長に込められた、当事者たちの情念に心動かされる。事実をそのまま描かず、叙事的英雄譚へと昇華させるに至った、取材者と生存者との関係性に打たれた。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

大海原での極限状態を体感させる力作

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 名著『白鯨』の発想の源となった海難事故の実話の映画化だが、『白鯨』のような狂気的な勇壮さを期待すると肩透かしを食らう。主題はモンスターとの戦いではなく、あくまでも極限下でのサバイバルだ。

 船を失った捕鯨船のクルーが大海原で、どう生き延びたのか? ロン・ハワード監督の冷徹なタッチに触れると、“自分ならどこまで生き延びられるか?”“この時点で諦めるだろうか?”等々の思考が脳裏をよぎるだろう。

 道徳を捨てざるを得ないほどのギリギリの精神状態は、『生きてこそ』のような実録ドラマにも似てヘビーな感触をあたえる。極限状態を体感させるという点で、文句なしの力作である。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

敵は巨大クジラ、ではなかった?

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

メルヴィルの小説『白鯨』の原点となった捕鯨船の悲劇を描いた実話ドラマは海洋撮影は迫力たっぷりなのだが、いかんせん脇が甘い。巨大クジラとの闘いよりも、救命ボートで漂流した乗組員のサバイバルをもっと詳細に描いてくれたら、さらに興味深い人間ドラマになったはず。水も食料も無い状況で男たちが下す決断は? 精神状態の変化や信仰との関わりは? 肝心な部分をさらりと流されて、肩すかし。『ラフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』のような人間性に関するメタファーなどが感じられず残念。ただし主人公の一等航海士が企業ヒエラルキーに怒りを覚えつつ、辣腕を発揮するくだりは日本のサラリーマンなら共感できるかも。

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平沢 薫

船の帆がはらんだ風力が画面に漲る

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 帆に風を受けて進む帆船の、力学的な描写が心地よい。帆が風を得てパンッと膨らむと、ロープがグッと引っ張られ、それを固定する金具との間がギュッと締まって、その摩擦によって生じる音がする。そうやって、画面の上で物理的な力の緊張が伝播していく。そうした細部が、青い大海原を進む白い帆船、大嵐に翻弄される帆船、といった大きな光景に加えられて、画面に力がみなぎる。
 基本は、船の仲間こそが家族だと考える海の男たちのサバイバル・ストーリーだが、その出来事を小説にしようとするまだ無名の小説家の物語でもあり、ベン・ウィショー演じるこの小説家が「お前の恥は何か」と問われたときの答も胸を熱くする。

この短評にはネタバレを含んでいます
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