WISH I WAS HERE/僕らのいる場所 (2014):映画短評
WISH I WAS HERE/僕らのいる場所 (2014)ライター4人の平均評価: 3.8
スター・ウォーズと宗教は結びつきやすい。
兄は売れない中年俳優(家計を賄うのは妻のほう)、弟はトレーラーに一人住いのオタク…となれば日本にもありそうなモラトリアムの匂いがするし実際そうなのだが、本作の場合ユダヤ人一家であるということが大きく関わっている。そもそも無神論的に育った息子たちに我慢ならず、父は孫に宗教教育を与えたくて援助していたわけだ(孫は教育の甲斐あって神の概念に近しくなっていたりする)。そんな宗教心とは距離を置いた息子たちが「父の死」を契機に偏在する神のしるし(兄は地球を救う宇宙戦士に憧れた想い出を、弟はずばりコスプレを通じて)に触れ、ついには三代に渡る家族の繋がりが暖かな波のように押し寄せるのだ。
誰も触れてないけれど、ジム・パーソンズも出てまっせ!
妻も子供もいる一家の大黒柱でありながら、いい年こいて自分の夢ばかり追い続ける売れない役者が、窮地に立たされることで否応なく大人の責任を自覚していく。
といっても、決して偉そうに説教をたれる映画ではない。人生とはままならないもの。そして人間は誰しも不完全。望みの全てを手に入れられるわけはないのだから、せめて自分にとって何が一番大切なのかくらいはハッキリとさせてケジメをつけようよ。そんな風に迷える大人の背中を優しく押してくれる。
なお、宣伝では全く触れられていないが、主人公の後輩俳優としてジム・パーソンズが出ているのでファンは要注目!最近売れっ子の子役ピアース・ガニョンも光っております。
悩める青年は、30代になってもまだ迷うのね
『終わりで始まりの4日間』で監督デビューしたザック・ブラフの新作は、ブラフ印だらけ! 主人公エイダンがモラトリアム感たっぷりな売れない俳優で、父親が末期がんに冒されたことで家族関係と人生の修復を迫られる展開に既視感アリ。一種の続編といってもいいかも。ただ前作の青臭さは減り、主人公一家の生活感がにじみ出るのが好感度大。うまくいかない人生に悶々と悩みながらも、夫として、父として、息子として、そして兄としての立場や責任を自覚していく過程を身の丈にあったレベルで描いたのも胸にぐっときた。人生ってそんなにドラスティックに変化しないし、要は気持ちの持ちようということを改めて思わせてくれる佳作だ。
10年ぶりのシンガーソングライター的な自作自演の佳品
ハル・アシュビー監督作とも比較された珠玉の青春映画『終わりで始まりの4日間』から10年、久々にザック・ブラフの自作自演(監督兼主演)第2作が届いた。続編ではないが、主人公は前作と同じ「売れない役者」。ただし繊細な青年から、妻子持ちのモラトリアム中年に歳月ぶん変化している。
今回は「父と息子」という主題が前面化し、無職の弟との関係も肝となる。自分の人生を基にパーソナルな表現を奏でる“弾き語り”の味わいに満ちている。
ブラフの趣味全開の選曲も良く、前作でも使われたコールドプレイはキャット・パワーとコラボ。妻役のK・ハドソンが口ずさむJ・テイラーの「スウィート・ベイビー・ジェイムス」も泣ける。