スノーピアサー (2013):映画短評
スノーピアサー (2013)ライター4人の平均評価: 4
スリルたっぷり。バイオレンスも強烈なので心して
ひたすら走り続ける電車自体が、まさにこの映画の象徴。スリルとアクション、スピードたっぷりに、理屈や説明抜きに展開しつつ、後半には、少しずつそれらについても理由づけがなされていくのだ。SF、ディストピアというジャンルはしばしば現代社会や政治の問題に触れるものだが、今作もそう。しかも、とてもうまくやっていると言える。バイオレンスは、相当にきつい。思わず目をそらすことが何度もあったし、実際には見せなくても、主演のクリス・エヴァンスが過去を振り返って語るシーンなどは、同じくらいぞっとさせられた。それは作り手と役者の力量のおかげだが、とにかく、残酷場面が苦手な人は、そこを覚悟で挑んでほしい。
ようかんこわい
“毎回ド肝を抜かせてくれるポン・ジュノ監督作”という、高いハードルで観ると、どこかモノ足りない。テリー・ギリアム好きが高じたか、オリジナリティに欠けているのだ。
とはいえ、原作の立ち読みから膨れ上がったビッグプロジェクトを頓挫させることなく、ハリウッドやフランスを巻き込んで完成させた監督の狂気を垣間見ることができる。そして、劇中キャプテン・アメリカらと並んでも見劣りしないソン・ガンホの雄姿。これらが韓国メガヒットの要因といえるだろう。監督の意向から3Dは制作されなかったが、やはりIMAX級のスクリーンで観たい超大作。観れば“ようかん”を口にするのを躊躇すること間違いなし。
ドラマは直球、演出は緩急、歯応えA級
最後方の貧民車両から最前の富裕車両へと向かう革命の士たちの物語。列車内のみで展開するドラマにふさわしく、一直線のストーリーでわかりやすい。
とはいえ、語り口は必ずしもシンプルではない。殺伐とした戦闘描写が炸裂したかと思えば、寿司屋車両でのんきに寿司を食べていたり。スリルとユーモアの緩急はテーマの重みを含めて、まさにポン・ジュノ監督らしさと言える。
インターナショナルな豪華キャストも見どころだ。どのキャラも笑えたり、燃えたり、虚無を抱かせたりと、監督の柔軟な演出に応えてみせる。とりわけ、ティルダ・スウィントンのヒステリックな存在感は妙味!
『シベ超』ぎりぎりだが破格&圧巻のフルパワー!
これまでハズレなしの最強監督ポン・ジュノだが、多国籍化した今回は賛否が分かれるはず。氷河期到来と格差社会の様相を予見的とする向きもあるが、基本はムチャな設定、チープな美術とCG、『ソイレント・グリーン』からさほど進歩していない風刺。凡百の監督なら完全に駄作である。
ところが! その底抜けな作風ゆえにポン・ジュノの桁外れの怪力が余計際立っている。演出&描写力の凄まじさだけで全く飽きずに観られるのだから。総合的な印象は黒澤明の『どん底』を暴走機関車に乗せて、ハードな幻覚剤で歪ませたような……。彼なら『シベ超』でもパワフルに仕上げるのだろう。
加えて鬼ババア役のティルダ・スウィントンが最高!