パージ (2013):映画短評
パージ (2013)ライター5人の平均評価: 3.6
おまえは、どっちの側だ? 究極の選択にドキドキ!
マイケル・ベイ率いるホラー映画プロダクション、プラチナム・デューンズにはコワいもの好きとして注目しているが、よくも悪くもベイ作品らしい大振り仕様でアタリ・ハズレも大きい。その点、本作は堅実で私的にはクリーンヒット。
12時間の極限状態というアイデアがまず面白く、裕福な主人公一家がそこで生き残れのか?という点に興味を引かれる。マスクを付けたパージ愛好家のビジュアルもインパクト大で、絵的にも面白い。
何より興味深いのは、自分ならばパージする側に立つか、パージを避ける側に回るか?考えさせる点。見る者に究極の選択を突きつけるという意味でも、本作は濃厚かつスリリング。続編ともども必見!
アイデアはユニークなので、続編に期待かな。
犯罪抑制と経済発展のために1年に一夜だけ暴行や殺人が許可される近未来のアメリカという設定がまずユニーク。ただし暴力的傾向と個人主義を満足させることが国家の発展につながるという論理が咀嚼できず、一夜だけのプリミティブな行為に共感はできない。倫理観念とサバイバル本能のせめぎあいが軸となるのは予想通りで、展開に意外性がないのがやや残念。監督と脚本家が主張したかったのは、イーサン・ホーク扮する主人公ジェームスの妻の決断こそが人としての正しい道ということか。私だったら、どうしていたか? いや〜、それにしてもどこで誰に恨みを買っているかわからないのが怖い。
この過刺激サスペンスは直球の問いを投げつけてくる
この映画は真っ正面から倫理を問いかけてくる。いやもちろん、設定通りに、極限状況下のサバイバル・サスペンスで、一種のディストピアもので、仮面を被って匿名的な存在となった人間の恐ろしさを描く一種のホラーでもある。主人公は、この映画の特殊な社会システムの中で恩恵を得ている側なので、ストーリーをとことんブラックな方向に転がしていくのが常套手段だろう。が、途中で方向が変わる。そして、社会のシステムに問題があるとしたら、本当にそのシステムに従うこと以外に出来ることはないのか、そんな真っ当な問いを投げかけてくるのだ。極度に刺激の強いサスペンスの後に、ふと出現するその問いが、逆に新鮮だ。
殺りたい放題な一夜がやってきた!
『ピッチ・パーフェクト』同様、「面白いのに、なぜ日本公開されない!」とヤキモキさせられていたユニバーサルが生んだシリーズ一作目。とある家庭の一夜が舞台の短編(もしくは「世にも奇妙な物語」)的設定であり、現代のアメリカ社会に対するメッセージ性も強い。とはいえ、監督が『アサルト13 要塞警察』の脚本家だけに、ジョン・カーペンターをリスペクトした、ヒタヒタと迫りくるサスペンス・ホラーな演出が冴え渡る。さらに、イーサン・ホークの鬼気迫る演技もあり、密室エンタテイメントに仕上がっており、同じディストピアものでも、昨今の『ハンガー・ゲーム』系にモノ足りなさを感じる『バトロワ』信者にはオススメだ。
暴力国家アメリカの本質を投影した悪夢的な寓話
ようやく日本公開される『パージ』シリーズ第1弾。強権的な政治の敷かれた近未来のアメリカで、国民のガス抜きのため一年に一晩だけ、殺人を含む全ての犯罪が合法になるという設定のもと、自宅を暴徒に襲われた家族のサバイバルを描く。
物語の根底にあるのは戦争という殺人ビジネスにより繁栄を享受してきた自国アメリカへの強い不信感。政府は綺麗ごとの勇ましい理想を掲げ、国民の不安や警戒心を煽ることによって暴力を正当化する。体制側の富裕層に属する主人公一家が見舞われた恐怖は、いわばそのしっぺ返しだ。
よくよく考えれば無理のある設定だが、しかしアメリカという暴力国家の本質を投影した悪夢的な寓話と見れば興味深い。