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そこのみにて光輝く (2013):映画短評

そこのみにて光輝く (2013)

2014年4月19日公開 120分

そこのみにて光輝く
(C) 2014 佐藤泰志 / 「そこのみにて光輝く」製作委員会

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.5

森 直人

すべてが最高レベル。特に菅田将暉!

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

『祭りの準備』『青春の殺人者』『サード』『遠雷』――。70年代半ばから80年代初頭まで、「負性」を描くことにおいて絶品だった日本映画の傑作群に全然負けていない。ATGの作風を彷彿させつつ現在形の生々しさが脈打つ。格差社会が叫ばれて以降、主にロスジェネ世代の作り手が同様のザラザラした感覚と「出口なし」の閉塞に向ける視座を取り戻しており、作家・佐藤泰志の再評価もその気運に関わっているのだろう。

先行する佐藤原作の映画化は『海炭市叙景』だが、そのチームが本作と『私の男』(6/14公開)に枝分かれし、新旧をつなぐ最高の役者陣が結集している流れに注目。特に本作の菅田将暉は『共喰い』からの飛躍が凄すぎ!

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

生きることの残酷と向き合う男女の絶望と再生

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 過去の罪悪感から生きる目的を見失った男と、社会の底辺で夢も希望もなく暮らす女。そんな2人が絶望の淵でもがき苦しみながらも寄り添っていく。
 生きるということの耐え難い残酷と向き合う男女の触れ合い。それは“愛”とか“絆”とかいう言葉が空々しく聞こえるほど胸に重く迫る。演じる綾野剛と池脇千鶴の佇まいは見事。お互いの孤独を慰めあうかのような濡れ場は出色だ。これほど魂を揺さぶられるセックスシーンは見たことがない。
 そんな2人を繋ぐ菅田将輝がまたいい。頭は悪いが純粋で無垢な若者の、内に秘めた悲しみや怒りを全身から迸らせる。そのなんと痛々しいことか。これは今年絶対に見ておかねばならない邦画の一つだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

ひたすら命をつなぐ、それが「生きる」こと。

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

『海炭市叙景』で注目された佐藤泰志の著作の映画化だ。ある事故をきっかけに無為な日々を送る青年と社会の底辺でもがく姉弟がくり広げる人間ドラマだ。閉塞的な地方都市で夢や希望とは無縁な人生を送る3人のもどかしさが伝わり、胸に疼痛を覚えた。特に痛々しいのは、工場パートと売春で家族を養う状況を唯諾々と受け入れているヒロインだ。逃げたくても決して逃げない彼女の心情をおもんばからせる呉美穂監督のてらいのない演出と太々しいまでの生命力を感じさせる池脇千鶴の演技にしびれた。人生に意義を見出せず、喪失感と孤独にさいなまれながらもひたすら命をつなぐ。それが「生きる」ことと佐藤にも思ってほしかった。

この短評にはネタバレを含んでいます
ミルクマン斉藤

過去2作とはまるで別人の呉美保がここにいる!

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

家庭内依存と過去のトラウマから抜け出せず、社会の最底辺で闇を彷徨う男女。貧困、セックス、負の連鎖。日活ロマンポルノやATG映画をどうしても想起させる、どん詰まり感極まるずぶずぶな四畳半的世界だが、何故にこうも爽やかなのか。それはメイン俳優三人の醸し出す色気、メジャー感、演技力に負うところ大だ。巧すぎてか、最近は名脇役と化しつつあった池脇千鶴が本領発揮。綾野剛はシネスコの半分を顔のアップで占拠しても磁場生みまくり。いちばんの驚きは菅田将暉で、自転車の漕ぎ方ひとつで人間の豹変を表現し、間違いなく今年の助演男優賞を独占するだろう。魅惑的に暗闇を捉える近藤龍人のキャメラもたまらなくエロティックだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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