ワイルドカード (2014):映画短評
ワイルドカード (2014)ライター6人の平均評価: 3.2
こんなジェイソンはイヤだ!
フィルムの中のジェイソン・ステイサムが魅力的に見えるのは、単にアクションが出来るからというワケではない。行動を起こすまでに迷いがないから痛快で、男女を問わず魅了するのだ。大概の役が元スペシャリストという経歴の持ち主。危機は瞬時に察知、敵は瞬殺…の、はずだ。本作で演じるニックも元特殊部隊で、今は凄腕用心棒という設定。なのに優柔不断な行動で、まんまと敵の手中に落ちる。スクリーンのジェイソンに、イラッとさせられる稀有な作品である。
十八番とも言える正義感貫く男とはまた別の、新キャラを模索中か。ジェイソンの実験映画と受け止めたい。
強引に派手な展開を狙わない余裕のステイサム映画。
いわゆる私立探偵もの(職業は警備コンサルタント兼用心棒だが)の範疇に入るステイサム流ハードボイルド。サディストのマフィア一味に痛いお仕置き&拳銃無用のボコりまくり、といった見せ場はあるものの(『トランスポーター』シリーズ以来となるアクション監督コリー・ユンとの相性も抜群)、W.ゴールドマンの原作・脚本は一攫千金の誘惑に勝てない、とかフレッシュ・グレープフルーツジュースが好き、といった主人公のパーソナリティを重視。女性カジノディーラー(H.デイヴィス)とのポーカー勝負やアウトロー的生き方に憧れるIT長者(M.アンガラノ)との心の交流に時間が割かれ、いささかスマートに過ぎはするが大人の仕上がりだ。
ハゲがハゲを嘲笑する深い意味。
ウィリアム・ゴールドマンのオフビートな脚本を生かしきれず、日本ではビデオスルーのバート・レイノルズ主演『ビッグヒート』。生粋のギャンブラー、ロバート・アルトマンが監督を蹴ったことで知られるが、今回のリメイクは『将軍の娘』で組んだ職人サイモン・ウェストにより、脚本の面白さがにじみ出ている。しかも、スタンダード・ナンバーの使い方やカット割、映画ファンの心をくすぐるキャスティングなど、オトナの映画になっているのも嬉しい。ただ、コリー・ユン指導のステイサムは強すぎて、哀愁さは半減。ちなみに、冒頭でオリジナルとまったく同じヅラ男を嘲笑するギャグをやったのは、ヅラだったレイノルズへのリスペクトですか。
ハードボイルドな味が活きたステイサム最新作
ギャンブルもケンカもどちらも“戦い”には違いない。それをハードボイルドとして煮詰めた本作は一見地味だが、アウトサイダーのドラマを好む者を惹きつけずにおかない。
ストイックなアクション・ヒーローを得意とするジェイソン・ステイサムがふんした主人公はなるほど硬派だが、ギャンブル好きが玉にキズ。再生と破滅の狭間に立たされた、そんな彼の心象風景がハードボイルドな空気として機能する。
『トランスポーター』シリーズでステイサムと組んでいるコーリー・ユン演出の小気味よいアクション演出も冴えるうえに、舞台となるラスベガスの極彩色のネオンもアヤしげで妙味。小品だが味のある逸品だ。
これぞ男が惚れる“男の映画”
原作と脚本は「明日に向って撃て」のW・ゴールドマン。かつてバート・レイノルズが主演した「ビッグ・ヒート」(日本ではV発売のみ)の再映画化だ。
ラスベガスのワケあり用心棒が、別れた女のためによそ者マフィアを敵に回す。拳銃など無用、灰皿一枚でも敵を倒せる男J・ステイサムのアクションを存分に楽しめる、ウルトラハードなバイオレンスが問答無用にカッコいい。
だが、最大の魅力は底辺の弱者に寄り添う主人公から気風のいいホテルのメイドまで、とにかくキャラの立ちまくった登場人物たち。そしてジワリと効いてくる粋なセリフの数々。心に傷を持つ人間たちの奇妙な友情や絆にもシビれる。まさに男が惚れる“男の映画”だ。
意外にもオフビートな面白さ
J・ステイサム(主演)×S・ウェスト(監督)という問答無用な娯楽活劇タッグの三作目だが、今回は珍味。冒頭から「ハズシ」をかましてくるのだが、そのノリに慣れると偏愛の域に入ってくる。
ステイサムの役柄はワケありの過去を背負った用心棒。「ほぼ全部それやん!」的な毎度おなじみのキャラだが、肝は「ラスベガスに憑かれた男」という点。脚本は83歳の大御所W・ゴールドマン(ウェストとは『将軍の娘』で組んでいる)。アクションとギャンブルとクリスマス映画を混ぜて発酵させた独特さは老人力の賜物か?
だが本当の見ものはS・ベルガラ(美女)とM・ヴィンティミリア(マフィア)の一戦かも。名付けて「デカチン対決」!