ジョン・ウィック (2014):映画短評
ジョン・ウィック (2014)ライター5人の平均評価: 3.6
銃撃と格闘の融合がもたらす劇画的様式美に酔う
カンフーと銃撃の融合技“ガン=フー”に興味を引かれ、『リベリオン』等で描かれた荒唐無稽な“ガン=カタ”を連想したが、これは似て非なるもの。
銃撃も格闘も接近戦重視で、リアリティに節度アリ。それだけでなく、この妙技が闇の中に妙に映える。素早いカット割りから、スローのカメラの横移動まで、劇画のようなクールネス。日本の時代劇が持っていた様式美のような鮮烈さを宿らせているのがミソ。
愛犬を殺された怒りからマフィアを丸々壊滅させてしまう主人公の迷いのなさも気持ち良く、夢中になれた。一直線のストーリーを凝ったアクションが彩る快作。ここでのキアヌは堂々たるハードボイルド・ヒーローだ。
仁義と掟を重んじる任侠映画みたいな世界観もユニーク
妻を亡くしたばかりのやさぐれた元殺し屋が、調子ぶっこいたマフィアのボスのバカ息子にブチ切れ、お前らまとめてぶっ殺す!ってな具合に大暴れする…という巻き添えを食らった組織の皆さんが少々気の毒になるお話。
暗黒街の誰もがビビる伝説の凄腕という設定ゆえ、主人公があまりにも強すぎるという難点はあるものの、孤独と哀愁を滲ませたキアヌ・リーヴスのダークヒーローぶりは秀逸。ひと頃世間の話題を呼んだボッチ感を完全に逆手にとっております。
また、裏社会にも厳格な紳士協定があって、仁義や掟を破った不届き者は罰せられるという任侠映画みたいな世界観も面白い。シリーズ化決定は朗報だ。
生来の鈍さを感じさせないキアヌの頑張りに拍手!
『スピード』や『マトリックス』をヒットさせたキアヌ・リーブスだけど、アクション演技はかなり下手。走り方の鈍臭さから察するに、運動神経がよろしくないようで……。そんなキアヌが本作ではガチなアクションに挑戦し、見事に壁をぶち破った。クラブマガっぽい格闘技やハードな銃さばきをこなすためにかなり特訓したのが見て取れる。50歳でこんな激しいアクション映画に出演し、しかもかっこいいのだからうれしいではないか。『ウォンテッド』にも似た殺し屋ソサエティが存在する大前提、その世界観で進行する復讐劇も劇画調で心躍るし、イアン・マクシェーンやウィレム・デフォーら個性派俳優がチラリ出演する贅沢さもたまりません。
『マトリックス』より、リアルで実戦的なキアヌにシビれる
『リベリオン』『ウルトラヴァイオレット』でガン=カタを描いたカート・ウィマーと思考回路は変わらないが、過去に数度キアヌのアクションをサポートしてきたチャド監督の「これってカッコよくねぇ?」という声が聞こえてきそうなシチュエーションの連続に、中2魂が揺れ動く。とはいえ、二丁拳銃じゃなく、あえてハンドガン一丁で標的に立ち向かうキアヌのムダのない動きはかなり実戦的で、岡田准一にも通じる武術に対するストイックさもビシビシ伝わってくるのが、『マトリックス』との違いだ。本当に敵にしちゃいけない男の話といえば、『96時間』だが、組織との関係性も含め、ハードボイルドな展開は『ラン・オールナイト』に近い。
"ぼっちキアヌ"のまま、ヒーローとして復活!
ひとりさみしく公園のベンチに座っている姿がフィギュアにもなって"ぼっちキアヌ"のイメージが定着したキアヌ・リーヴスは、もうヒーローにはならないのかと思っていたら、そのイメージをそのまま使って、新たなヒーローとして復活した。殺し屋を引退して"ぼっちキアヌ"になっていた彼が、突如覚醒し、たったひとりでロシアン・マフィア集団を殺戮しまくる。その理由が、愛犬のビーグル犬を殺されたから、というのもナイス(亡き妻に贈られた犬、という事情はあるが)。アクション・コーディネーター出身の監督による、ロシア軍特殊部隊の格闘技と現役の銃群を使った実践的アクションが、このヒーローをリアルなものにしている。