X-ミッション (2015):映画短評
X-ミッション (2015)ライター5人の平均評価: 2.8
生身のスタントを極限まで追求した痛快アクション
これは「ハートブルー」のリメイクというよりもオマージュに近い。FBIの新人捜査官が犯罪集団に潜入するというストーリーは、あくまでも映画としての体裁を整えるための口実であり、基本は海に山にと展開される犯行手口としてのエクストリームスポーツを堪能する作品だ。
なので、人間ドラマがウソ臭い&薄っぺらいのも仕方あるまい。補正手段として一部にCGは使っているものの、いわゆるグリーンバックを一切使用しない生身のスタントを極限まで追求した点は評価されて然るべき。中でも、アルプス山頂からのウィングスーツ・フライングは圧巻かつ爽快。カメラマンも命懸けですよ。これは是が非でも3Dで見るべき。
キャメラマンも一緒に飛ぶウイングスーツ・フライングを体感せよ
“プロモーションビデオ的”という批判ワードを向けられがちな映画だが、シアターが体験の場へ変わる流れの中で、『ハートブルー』のVer.アップに膝を打つ。ドラマを接続詞と考え、アクションと撮影技術の堪能へとギアチェンジすれば、十二分に楽しめる。
犯罪集団の8つのミッションに沿って進む最尖端エクストリームスポーツの見本市は、海・空・山で過激に展開する。中でも、山頂からダイブしてフォーメーションを組んで山間を滑空する、時速230kmのウイングスーツ・フライングは圧巻。ドローン撮影ではない。キャメラマンも一緒に飛んでいるのだ。風を読み風と同化する、この飛行シーンの臨場感を味わうだけでも価値がある。
意識高い系の犯罪者って面倒くさいし、鼻につく!?
キアヌ・リーブスの鈍臭さを直視させられた『ハートブルー』のリメイクは、冒頭から最後まで危険なスタントが続き、エクストリーム・スポーツ好きならば楽しめるはず。これがデビューのE・コア監督はオリジナルとの差別化を図るために悪役をカリスマ化したが、これが大きな間違い。エドガー・ラミレス演じるボーディーのスピリチュアル入りまくりの反体制派っぷりは興ざめだ。Xスポーツ・アスリートとしての究極を目指すついでに鼠小僧になる彼らの気持ちも理解不能。いわゆる意識高い系のエコ・テロリストとして観客に大目に見てもらおうという設定としたら、失敗だな。ヒロインもただの尻軽にしか見えず、人間ドラマの部分はダメダメ。
本当にアクションだけなんです。
『ハート・ブルー』を愛する者にとって、この程度でリメイクを名乗られるのは辛い。ルーク・ブレイシーはだんだんユタに見えてくるが、エドガー・ラミレスがミスキャスト極まりないのだ。カリスマなボーディの欠片もなく、ユタが惹きつけられるにはムリがある。カート・ウィマーの脚本を期待したものの、謎解き要素もハッタリ程度。あの名シーンやってみました感は、まるでオリジナルを侮辱してるようで、せめて『EX エックス』ぐらいのアイデアで乗り切ってほしかった。ただ、アクション・シークエンスだけは別格であり、ウイングスーツ・フライングは『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』以上のモノを魅せてくれるため、★おまけ。
「ハートブルー」のアレンジぶりを見るのも面白い
エクストリーム・スポーツの魅力を体感する3Dアクション映画。それだけでOKだが、原点となった映画「ハートブルー」のアレンジぶりを見るのも面白い。アレンジのコンセプトが明快で、そのストレートさが痛快なのだ。FBIの新人捜査官がカリスマ的リーダー率いる集団の犯罪を潜入捜査するという、物語の基本は同じ。集団はサーフィンの名手だったが、エクストリーム・スポーツ全般の名人にバージョンアップ。各メンバーのキャラも描く。さらに、課題を一つずつクリアしていくという展開でゲーム感覚もプラス。そのうえで、この集団のカリスマ的リーダーのキャラ設定をどう現代化したのかも、見どころの一つになっている。