ティエリー・トグルドーの憂鬱 (2015):映画短評
ティエリー・トグルドーの憂鬱 (2015)資本主義社会の理不尽に翻弄される庶民の声なき叫び
日本よりも遥かに失業率の高いフランスで、格差社会の残酷な現実に晒される平凡な中年男の憂鬱な日常を描く。
家族を抱えながら働き盛りでリストラされた主人公。再就職の道は極めて険しく、数々の社会的な屈辱が待ち受ける。ようやく見つけた仕事は大手スーパーの監視員。今度は一転して、経済的苦境から万引きや不正に手を出した人々、つまり以前の自分と同じような弱者を糾弾せねばならない。
資本主義システムの矛盾に翻弄されながらも、ひたすら黙って耐え続ける中年男の、出口のまるで見えない暗澹たる日々。ドキュメンタリー・タッチの淡々とした映像から、もういい加減にしてくれ!という主人公の悲鳴にも似た叫びが響き渡る。
この短評にはネタバレを含んでいます