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パッセンジャー (2016):映画短評

パッセンジャー (2016)

2017年3月24日公開 116分

パッセンジャー

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3

清水 節

孤独と絶望がもたらす、世にも歪なシチュエーション・ホラー

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 壮麗な宇宙船のデザインに本格SFを期待すれば、愕然とする。実に歪な映画だ。言わば、宇宙空間で予定よりも大幅に早く目覚めてしまった乗組員のシチュエーション・ホラー。絶望的な孤独に耐え切れず、広大な船内は『シャイニング』のオーバールック・ホテルさながらの狂気の空間と化す。引用の仕方があからさまで、興醒めではあるが。歪さの核心は、主人公の屈折と欲望がもたらす悲劇を、世紀のロマンへと導く演出にある。公共性が壊れた今、この身勝手な行為を冷徹に見つめれば、カルト化の可能性もあったかもしれない。惹句の“宇宙版タイタニック”とは、エンディングから始まる、もうひとつの恐ろしき『パッセンジャー』だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

豪華客船の宇宙旅行を疑似体験

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ストーリーとは別に、本作にはもう一つの楽しみがある。それは、豪華客船での宇宙旅行が疑似体験できること。しかも、睡眠から目覚めているのは2人だけなので、宇宙船丸ごと貸切状態。どんなサービスもアトラクションも、待ち時間なく、他の利用者に煩わされずにたっぷり満喫できるのだ。船内のインテリアの未来的すぎないデザインは高級ホテルのような雰囲気で、本年のアカデミー賞美術賞ノミネートも納得。
 この豪華船でどんなアトラクションが待っているのか、詳細は見てのお楽しみだが、宇宙旅行なら誰もが期待する"宇宙遊泳"のアトラクションはもちろん完備。これも観客が疑似体験を味わえる仕様になっている。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

美人じゃなくてよかったな〜とホッとする

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

数字を前面に押し出す宣伝で名作漫画「11人いる!」的な展開を想像していたので、人間のモラルや愛を描く孤島サバイバルとわかってびっくり。穴だらけの宇宙移民計画や演技派の無駄使いなど突っ込める部分も多いけど、SFラブストーリーとしてみるのが正解かな。宇宙遊泳や無重力状態のプールなどの特撮も凝っていて、見応えあり。ジム役のクリス・プラットは天然のいい人っぽく、凡人からヒーローへと成長する過程に無理がないのがいい。魅力的だったが故に人生の軌道を変えられる美女オーロラも、相手がジムだからよかったものの…。生理的に受け付けない男性だったら?と想像すると怖すぎる。美人には常に危険がつきまとうんだね。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

旬のスターの顔合わせが一番の見どころ

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 舞台設定は近未来。惑星移住へ向かう宇宙船で120年間の冬眠に入っていた乗員乗客だが、その中で2人の男女が90年早く目覚めてしまう。一体なぜなのか?という謎に迫りつつ、船内で一生を終える運命に直面した男女の愛と葛藤が描かれる。
 重大なネタバレ案件の推移を含め、深く考えると納得のいかない点は多々あり。そもそも、宇宙空間に2人だけの男女が都合よく恋に落ちるという展開を、素直に受け入れることが出来るかどうかは賛否を分ける大きな鍵だろう。
 オスカー候補になった宇宙船内の壮麗な美術デザインは見事。ジェニファー・ローレンスとクリス・プラットの相性も抜群なので、スター映画としての華やかさを楽しみたい。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

だからといってスルーできないデートムービー

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

同じ宇宙を舞台にしたサバイバル劇を描いた『オデッセイ』に比べると、いろいろと詰めが甘く、ご都合主義であることから、まるでラノベ原作のようなモノ足りなさは否めない。とはいえ、“宇宙の『タイタニック』”の売り文句通り、エンジニアと女流作家の身分差ある恋はロマンチックで、それを演じる俳優が、今勢いのある2人であることから、スター映画としての要素も強し。しかも、明らかに男女の解釈が違う仕上がりになっていることから、デートムービーにはピッタリだろう。その一方で、ネタバレの部分など、『ヘッドハンター』のモルテン・ティルドゥム監督作らしい性悪な部分も見え隠れし、決してスルーできない一本になっているといえる。

この短評にはネタバレを含んでいます
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