ザ・プレデター (2018):映画短評
ザ・プレデター (2018)ライター6人の平均評価: 4
80年代風スプラッタ風味に回帰した、笑えるB級アクション
シリーズが生まれた80年代風の、過激で過剰なスプラッタ・アクション描写を盛り込む原点回帰。侵略ではなく人間狩りが目的だという奴らも、一枚岩ではなかったという事実がスリルを生む。身長3メートルの異種交配プレデターに、不気味だがどこかキュートなプレデター犬まで現れる、豪華盛り付け。『ルーム』『ワンダー 君は太陽』の名子役を迎えて父と子のドラマも挿入するが、シリーズネタをいじりまくる台詞に加え、ならず者たちは下ネタジョークを連発し、B級テイスト全開。ポップコーン片手に、笑える恐怖を堪能できる。
“敵の敵は味方理論”は宇宙でも通用する!
シュワちゃん全盛期に生まれた『プレデター』シリーズの最新版は、ド派手なアクションにS・ブラック監督らしいユーモアが巧みにミックスされたエンタメ作だ。本人も出演した第1作にオマージュを捧げた配役にニヤリとしたが、軍隊やCIAから尻尾切りされかける主人公マッケナ率いる負け犬軍団の常軌を逸しかけた言動やブロマンス場面が実に痛快。名子役トレンブイ君の役どころもダイバーシティーを意識しているし、頭脳派としての活躍を見せてくれる。相変わらず愛らしいし。第3作を見ていないと「?」となる展開もあるが、敵の敵は味方ってことと納得。シリーズのさらなる続行を期待したい。
シェーン・ブラック監督流のギャグも炸裂!
これは痛快。今回はシェーン・ブラック監督が「キスキス、バンバン」「ナイスガイズ!」で披露した、あのちょっと変わったギャグ感覚が、うまい方向に働いている。なにしろ「プレデター(捕食者)じゃなくて、ハンターだろ」というツッコミが、何度も登場するくらい。このギャグ感覚と怒涛のバイオレンスの相性がいい。そのうえ、プレデターを迎え撃つのは主人公はじめ戦場経験による心的外傷後ストレス障害の兵士たちと、主人公の息子で自閉症スペクトラムの少年で、全員がある種のスペシャリストとくる。監督は、彼自身がシリーズ第1作で演じた下品なギャグばかり言う兵士のノリをきっちり継承、ある意味、正攻法の続編に仕上げている。
これはもはや愛すべきはみ出し者たちの映画!
監督がS・ブラックだから期待していたら、プレデター愛を踏まえた予想外の展開で嬉しくなった。
役者として出演した『プレデター』でブラックはジョークを連発していたが、本作のセリフも笑えるものが多く、そのテンポの良さが目を引く。むろんシリーズ特有のスリルも活き、内臓もあらわのバイオレンスは適材適所。
興味深いのは人間側のキャラ設定。主人公もその息子も、彼らを助けるPTSDの元軍人たちも、プレデターを見て“ビューティフルなクソ野郎”とシュワと真逆なことを言うオタクな女性学者も、周囲から“頭がおかしい”と思われている。そんな連中に見せ場をあたえている点がいい。これははみ出し者礼賛映画でもある。
プレデタリアン改メ
さすがはシェーン・ブラック監督。『エクスペンダブルズ』な“ルーニーズ”の特攻っぷりは、自身所属の一作目の特殊部隊を思い起こさせながら、お笑い要素満載。彼らに“ウーピー・ゴールドバーグ似”と言われるプレデター同士の確執に、『アメリカン・スナイパー』な主人公と息子、軍隊も巻き込んだゴッタ煮感は『トランスフォーマー』風で、新種のハイブリッドや主人公と女性生物学者の掛け合いは『ジュラシック・ワールド』風。とはいえ、すべてのベースとなっているのは、本作と同じフレッド・デッカーとのコンビ作『ドラキュリアン』にほかならない。そんな愛しさと次回作への期待込みで、★おまけ。
もはや何が起こっているのかわからないレベルの勢いと激しさ
プレデター映画に望むものは、ほぼクリアされた。一瞬、何が起こったのかもわからない暴走的&突発的状況が何度も訪れるが、わからなくてもいい「勢い」で興奮させる力技のビジュアルと編集のスピード感が尋常ではない。
『ルーム』や『ワンダー 君は太陽』とは別方向に振幅する、天才子役ジェイコブ・トレンブロイの堂々たる熱演に感動しつつ、サムライ的習性をもつプレデターに対し、立ち向かう部隊に『七人の侍』をうっすら意識した個性を与えた点が心にくい。血の気の多さと男気、熱い絆をあくまで軽いノリでみせる彼らに、終盤、それぞれの最高の見せ場を与えたりと 、シェーン・ブラック監督が楽しそうに演出している姿が想像できる。