ADVERTISEMENT
どなたでもご覧になれます

ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男 (2017):映画短評

ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男 (2017)

2018年8月31日公開 108分

ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男
(C) AB Svensk Filmindustri 2017

ライター8人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.9

なかざわひでゆき

悪童マッケンローに自身を重ねたS・ラブーフの熱演が圧巻

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 最大のライバルが実は最大の理解者だったということなのだろう。どちらも勝つことを周囲に期待されるテニス界の天才スター選手。そのプレッシャーから来る孤独をボルグは表に出さずギリギリでため込み、マッケンローは悪態をつくことで発散していたわけだ。しかし、根っこにある苦悩は一緒。実は似た者同士だったとも言える。そんな2人の葛藤を丹念に描いたうえで展開する’80年ウィンブルドン決勝戦は、その結果が分かっていても手に汗握る。その時点ですっかり両者に感情移入しているからだ。特に、世間から誤解され続けた悪童マッケンローを演じるシャイア・ラブーフは、彼自身のイメージとも重なって演技とは思えない説得力がある。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

世紀の一戦に向けて交錯する天才たちの真逆のイメージ

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ボルグとマッケンローというと、コートの上では前者は沈着冷静、後者は素行不良という印象が強いが、ウィンブルドン決勝の世紀の一戦を軸にした本作では、それぞれに真逆の顔をフィーチャーする。

 コートの外では、前者はブレッシャーから愛する者たちを傷つけ、後者はひとりでホテルの壁に向かいストイックに作戦を考え続ける。そんなイメージとは異なる実像を対比させつつ、いずれも自分との闘いを繰り広げている点が面白い。

自分をギリギリまで追い 込んだ彼らが激突するからこそ、決勝戦のクライマックスは熱気をおびる。”世紀の一戦”へと至るまでの彼らの道のりを含めて、ドラマチックでアツい。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

知らなかったボルグの素顔にいやはや、びっくり!

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

アニメ『エースをねらえ!』に熱中した世代なので、冷静に正確無比なショットを放つボルグにお蝶夫人を重ね、泥臭い岡ひろみに肩入れする身としては悪童マック派だった。権威に逆らう姿がロックンロールだったし。しかし、本作で氷のようにクールな男ボルグの素顔が明らかになり、びっくり! 貧しい生い立ちへのコンプレックスや勝利へのこだわり、セレブ選手となってからの戸惑いといった心理描写で掘り下げられるボルグの人間くささを知るだけでも見る価値あり。魂レベルでつながっていた同類の天才マックと繰り広げる、ウィンブルドン史上に残る死闘の再現もかなりの迫力で、役者の体を張った好演が光った。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

デンマーク出身のドキュメンタリー作家による“テニス残酷物語"

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

70年代後半からの一大テニスブームを牽引した“悪童”と“氷の男”を描くのは、『アルマジロ』のドキュメンタリー作家、ヤヌス・メッツ監督。つまり、最終的にウィンブルドンのコートでぶつかり合う2人の天才プレイヤーの姿は、アフガニスタンの最前線で極限状態から戦争中毒に陥った兵士の姿にも重なる。時に吐き気も催す緊張感たるや、同じ天才対決を描いた『ラッシュ/プライドと友情』の比ではなく、ハンディカムやステディカムを駆使して縦横無尽に捉えた試合シーンは、息を潜めて見守るしかない。エンタメ性には欠けるが、“テニス残酷物語”というべき硬派な実録モノとしての見応えアリ!

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

テニスも史実も知らないのに熱くならずにはいられない

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 タイトル通り、2人の氷と炎のような正反対のありようを対比させ、各々の異なる魅力を描きつつ、それだけではなく、実はその2つは同じものなのではないか、というところまで掘り下げる。なので、最後に2人が試合をするに至った時にはもう、どちらか一方を勝たせたいとは思えない、いや、ここで勝ち負けに何の意味があるのかと思うところまで連れて行かれてしまっている。なのに、いざ試合が始まると熱狂せずにいられないのは、2人のプレイそれぞれに、これまで2人が歩んできた時間が重ねて描かれるから。これで、胸が熱くならないわけがない。その熱狂の中で、その感動を凌駕する何かを垣間見たような気までしてしまうのだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

苦心の編集と音で体感させるウィンブルドン決勝戦

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

『オーシャンズ8』のメットガラにも一瞬登場したジョン・マッケンロー。悪童という当時のイメージを、やはりハリウッドの問題児となったシャイア・ラブーフが「憑依」レベルで体現。これは予想どおり。意外なのはボルグで、一般的に冷静な貴公子のイメージだった彼の心の闇が明らかになり、天才が装う鉄壁ガードが剥がれ落ちていくドキドキ感が漂う。

多くのスポーツ映画が直面する、最高レベルの試合シーンの見せ方も、今作には苦心の跡がうかがえる。コートや客席、実況ブースなどさまざまなアングルで畳み込む編集と、生々しい音響の相乗効果によって、ウィンブルドン決勝の「熱狂」を映画の観客に臨場体験させることに成功した。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

天才同士の肉体に詩が宿る

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

今年はスポーツ史実物の秀作が続出! 『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』と『アイ、トーニャ』を繋ぐ時期――1970年代後半のボルグ時代から、80年代のマッケンロー時代へ。その端境期に生まれた奇跡、本物同士の美しき聖域を頂上決戦のコートに凝縮する。F1物『ラッシュ/プライドと友情』にも近いが、こちらはボルグの内なる獣性が劇の生命線。肉体ひとつでシンプルに渡り合う主演ふたりが素晴らしい。

ちなみにマッケンローのロック好きは有名だが、本作ではラモーンズのロゴT着用。『ロックンロール・ハイスクール』(79年)に、同時期に活躍したテニス選手兼俳優のヴィンセント・ヴァン・パタンが出演していた事を想い出した。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

対極の人間は誰にもわからないことを知る唯一の相手だった

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

副題のとおり、ボルグとマッケンローは対極。ボルグはジェントルマンで、すでに勝利を収め続けている。ここで負けることは許されない。マッケンローは急に出てきた、マナーを知らぬ暴れん坊。失うものは少ないが、嫌われ者の扱いだ。そのふたりのウィンブルドン決勝戦を描くこの映画は、スポーツ映画を超えた人間ドラマ。パパラッチもネットもない時代ながら、ボルグはセレブであることのプレッシャーに耐えかねていた。マッケンローも、記者会見で、「実際にやらないお前らにはわからない」と言ったりする。そんな彼らは、ほかの誰にもできないところでつながれる相手だった。スポーツにまったく興味がない人も、きっと感動する一作。

この短評にはネタバレを含んでいます
ADVERTISEMENT

人気の記事

ADVERTISEMENT

話題の動画

ADVERTISEMENT

最新の映画短評

ADVERTISEMENT