十二人の死にたい子どもたち (2018):映画短評
十二人の死にたい子どもたち (2018)ライター4人の平均評価: 3
悪意のデスゲーム物ではなく、意外に切ない青春劇
密室ゲームが題材でこのタイトルだから、新手のデスゲームものかと思いきや、これが意外にもしっかりと青春映画。
自殺志願の12人が全員同意の下で自殺を敢行するというルール。しかし人が12人も集まると意見も食い違うし、簡単に同意するわけにもいかなくなる。『十二人の怒れる男たち』にも似た、この他者との軋みが物語をスリリングにする。
そんなドラマの過程で、若者たちの“死にたい”理由が明確になってくる。それを未熟と切って捨てるのは大人には簡単だが、子どもには切実だ。下の世代を、そしてかつての自分を理解するうえでも興味深い。そういう意味では、21世紀の『ブレックファスト・クラブ』ともいえる。
自殺大国日本に生きる若者たちの心の闇
舞台はとある病院の廃墟。自殺願望のある12人の若い男女が、ネットの呼びかけで集団安楽死をするため集まる。ところが、そこには主催者も知らない謎の死体が。その死体を含めると合計で13人。この中に殺人者が紛れ込んでいるかもしれない。招かれざる客を探し始める若者たちだが、事態は意外な方向へと進んでいく。
若年層の自殺率が先進国の中でも最悪と言われる日本。いわゆる密室型サスペンスの体裁を取りつつ、そんな日本の若者たちの心の闇を炙り出していくわけだが、しかし残念ながら仕上がりはテレビの2時間ドラマの域を出ない。杉咲花に高杉真宙、新田真剣佑、北村匠海など芝居の上手い若手がズラリと揃っているだけに惜しい。
若手俳優の見本市止まり
『SAW』『CUBE』のようなソリッドシチュエーションスリラーもしくは、『バトルロワイアル』ばりのデスゲームを期待すると、大きく裏切られる。12人の死にたい理由はさまざまで、いわば現代社会の縮図といえるが、タイトル通り、ひとりの意見が残りの考えを切り崩していく『十二人の怒れる男』展開になっていく。「ダンガンロンパ」的会話劇でもあり、やっぱり怒鳴っている杉咲花に、まだまだ引き出しを開けてくる新田真剣佑など、若手俳優の見本市にはなっている。そういう意味では、プロデューサーが魅力的に見える原作かもしれないが、肝心な心理描写が弱く、強引さも目立つので、大胆な脚色・演出も必要だったのでは?
いろんな"なぜ"を詰め込んだストーリーが面白い
謎の死体はなぜそこにあるのか。集まった12人はどんな人物なのか。彼らはなぜ死にたいのか。彼らは自殺を決行するのか、しないのか。この4つを並行して描く重層的なストーリーが面白い。
そして、そういう要素の多いドラマなのに、描き方が分かりやすい。主要登場人物だけで12人もいるので、全員が判別できるのか気になるところを、12人はみな1~2人ずつ登場するしキャラ描写も明快なので、人数の多さがまったく気にならない。
さらに、死体をめぐるミステリーは、ヒントが画面に提示されている正攻法の謎解き仕様。エンドクレジットの映像まで楽しい"オマケ"になっているというサービスぶりだ。