ミスター・ガラス (2018):映画短評
ミスター・ガラス (2018)ライター4人の平均評価: 3.3
シャマラン流のハッタリを楽しめるか否かがカギ!?
『アンブレイカブル』の不死身男と超頭脳男、そして『スプリット』の多重人格男が一堂に会した、M・ナイト・シャマラン版『アベンジャーズ』(?)といったところか。なので、予め前2作を復習しておいた方が良いだろう。スーパーヒーロー否定論者の女性精神科医が、3人の身柄を拘束して実験台とし、彼らの超人的パワーが「単なる思い込み」であることを立証しようとする。なんだかよく分からない話だが、力技で押し切っていくところがシャマラン流(笑)。壮大な陰謀論へと展開する終盤のどんでん返しもかなり強引。このハッタリを楽しめるか否かで評価は大きく分かれるだろうが、シャマラン信者は思わずニヤニヤしてしまうはずだ。
意外にも感動的な(?)シャマラン・ユニバース完結編
もし、あなたがシャマランを見限っているならスルーして問題ない。しかしヘンな監督だが、ヘン過ぎて凄いと思うなら見逃すべきではない。
『アンブレイカブル』の主人公とヴィラン、『スプリット』の24人格者が入り乱れるダークな決戦。いずれも精神異常のレッテルを貼られた能力者で、各キャラにはサイドキック的存在も付いており、シャマラン流アメコミ美学といった趣。
例によってサスペンスにもスリラーにも収まらないジャンル=シャマラン映画ではあるが、“他人とは違う”ことからくる孤独というテーマには今回もブレはない。真の勝者が判明する結末にグっときてしまった。
前2作を超える深い感動が待っている
「アンブレイカブル」を見たときよりも、「スプリット」を見たときよりも、さらに深い感動が待っている。それを充分に味わうために、本作の前にもう一度、この2作品を見直しておく必要がある。
前2作はもともとシャマラン監督によるスーパーヒーロー論なのだが、今回はそれをもうひとつ上の次元まで推し進める。劇中、サミュエル・L・ジャクソン演じるミスター・グラスは「これに19年かかった」と言うが、この年月は「アンブレイカブル」公開の2000年から本作公開までの時間であり、この台詞はシャマラン監督自身の思いでもあるだろう。この年月も胸に響く。もちろん、シャマランらしいサプライズも用意されている。
シャマランを愛しているか、そうでないかが試される
全方向に支持された『シックス・センス』『ヴィジット』は特例として、シャマラン監督は描きたい世界に突進するあまり、最低限の現実味や重要な感情を放ったらかしにする傾向もある。マイペースの才能は、今作で再び証明された。『アンブレイカブル』から連なり、コミックで描かれたスーパーヒーローが現実に存在する設定なので、確かにリアルさは必要とされない。それでも重要な場面で周囲の対応があまりに適当だったり、凄まじい描写力でドキドキしていた心に、何度かブレーキがかけられ……と、映画の冷静な評価としては星の数どおりだが、ツッコミどころを微笑ましく楽しんだのも事実。無邪気な子供のように憎めないシャマラン演出なのです。