ブライトバーン/恐怖の拡散者 (2019):映画短評
ブライトバーン/恐怖の拡散者 (2019)ライター4人の平均評価: 3.8
ジェームズ・ガンのダークサイドも覚醒!
『AKIRA』の影響大な“悪の『スーパーマン』誕生物語”ともいえるストーリー展開は、かなりド直球。とにかく『スリザー』の地球外生命体と『スーパー!』のダサ・ヒーロー感がほどよくミックスされながらも、ジェームズ・ガンが得意であるお笑い路線に一切走らないのが、とにかく不気味だ。例のディズニーとの問題がピークだったときに製作された一作と考えると、これがなかなか感慨深い仕上がり。しかも、ガンと仲間たちのダークサイドといえる情念が、“アンチ『ジョーカー』”に響く可能性も? ちなみに、『スリザー』繋がりで出演したと思われる母親役のエリザベス・バンクス。今回も、いい仕事してます!
強烈なカウンターパンチ
『ガーディアンズ・・・』というより『スーパー!』の監督のジェームズ・ガンがプロデュースした作品というのが一番しっくりくる作品。
MCUの一つの帰結点『インフィニティ・ウォー』『エンド・ゲーム』に製作総指揮として参加し、さらにDCサイドの『スーサイド・スクワッド』の監督することも決まっているジェームズ・ガンがそんなヒーロー映画の大潮流にぶち込んだ強烈カウンターパンチの作品となっています。
これはジェームズ・ガンが仕掛けたことに意義があり、映画の骨格になっています。
テーマに対して姿勢が作品に素直に反映されていて、容赦のない描写も含めて、映画のクオリティを1段も2段も押し上げています。
赤いポスターのマント姿にピンときたら、きっと正解!
これもまた、もうひとつのかなりユニークなスーパーヒーロー映画論。しかも、製作は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のジェームズ・ガン監督で、原案&脚本はガンの弟ブライアン・ガンと従兄弟のマーク・ガン。見ていると、本作の製作時期が、偶然、ガン監督が過去のツイートのためディズニーからクビになっていた時期と一部重なったことや、ガン監督には2010年の異色スーパーヒーロー映画「スーパー!」があることが思い出されてくる。そのうえ、ザック・スナイダー監督のスーパーヒーロー映画へのオマージュがたっぷり。スナイダー監督のファンなら、そこも見逃すわけにはいかない。
恐るべきアンチスーパーヒーローの誕生
宇宙からの生命体、舞台が田舎町、ヒロインにE・バンクスという点からJ・ガン監督の出世作『スリザー』を連想させるが、こちらはユーモア控えめ。
人間として育てられた異星の少年がスーパーパワーに覚醒し、それをエゴのために使いだすという恐怖譚。イジメの対象になり、空想上のヒーローをノートに描き続ける、そんな彼の姿に内向性が表われる。鬱屈が暴走に向かわせたのかどうかははっきりとは描かれないが、わからないゆえの気味悪さが宿る。
ガンに演出を託された俊英D・ヤロヴェスキーのホラーセンスは初期ガン譲り。ウェイトレスが眼球に刺さったガラスの破片を抜く場面の執拗さに、彼のブラックな志向がうかがえる。