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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 (2019):映画短評

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 (2019)

2020年6月12日公開 135分

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語

ライター9人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.2

なかざわひでゆき

原作の基本精神を鮮やかに蘇らせた古典文学の秀逸なアップデート

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 これは古典文学のアップデートとして素晴らしく秀逸。大胆な取捨選択や再構築を施しながらも原作の基本はそのままに、4人姉妹それぞれの人生の選択に女性の多様な可能性を肯定しつつ、そんな彼女たちが直面する様々な困難に今なお変わらぬ女性の生きづらさを投影していく。ルイーザ・メイ・オルコットの原作が持つ普遍的なフェミニズム精神を、瑞々しいタッチで鮮やかに再現したグレタ・ガーウィッグの演出が見事。キャスト陣もいずれ劣らぬ好演だが、中でもフローレンス・ビュー演じるエイミー像はこれまでの解釈とかなり違って非常に新鮮だ。オルコット女史がもしまだ生きていたら、きっと今回の映画版を誇りに思ったことだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

映画らしい上級の構成力。現代に訴求しつつ、過剰すぎないテーマ

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

小説家をめざすも、当時の性別によるハンデを乗り越えなければいけない。そんな次女ジョーを軸に、強い意志を貫く末っ子のエイミーも際立たせ、しかも女性監督のガーウィグが捉えることで、もしやテーマがあからさまに突出するのか…と思いきや、人間の強さの裏に潜む弱さも忘れずに見つめ、包み込むような感覚によって、差別への反発、多様性への訴求が滲んでいく。「押し付けがましくなく」言いたいことを伝えた、見本のような一作。

全体の構成も巧妙に計算されており、前半こそ、時間が無造作に移動しているようで戸惑うものの、構成に慣れてきた後半、この時間の移動が、心地よく美しい感動をもたらす。映画として「上級」のつながり!

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

物語の理解度が深まる見事な脚色に脱帽!

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

子供時代から大好きな本で四姉妹もお馴染みだったが、G・ガーウィック監督の脚色により物語やキャラクターにさらなる深みが加わった。男性優位社会における女性の生き辛さや女性の自立に欠かせない経済力の重要性を打ち出したフェミニスト映画としても必見だ。 “マーチ家の長男”を自称する元気なジョーを体現したS・ローナンが素晴らしいが、彼女に負けないのが末っ子エイミーを演じたF・ピュー。原作では美貌自慢のおバカな面が鼻につくが、映画版は現実を見据えて思慮深い大人へと開花していく少女となっている。オルコット女史が行間に潜ませた思いを読み取った監督の手腕で、150年以上前の物語が現代に鮮やかに蘇った!

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くれい響

この邦題もあながち間違いではない

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

ウィノナ・ライダー無双だったジリアン・アームストロング監督作が25年前だけに、リメイク的にはちょうどのタイミングで、『レディ・バード』チームに 安定すぎるワトソンに、今度は13歳に化けるピューを加えた最強の布陣も魅力的だ。グレタ・ガーウィグ監督作らしく、四姉妹の心理描写が丁寧に描かれるだけでなく、出版社に作品を持ち込んだ次女ジョーが編集者から差別を受ける展開から始まる脚色も興味深い。ジェーン・オースティン作品を意識しての共感度の高さもあるうえ、この邦題もあながち間違いではない。ただ、時系列が入り乱れることで、ある程度、キャラや物語を知っていないと、混乱を招く恐れもアリ。

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平沢 薫

これは少女時代に別れを告げる物語でもある

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 大胆な脚色により、新鮮な魅力を生み出す。それでいて従来の魅力をも併せ持つ。誰もが知る物語を、その時期を終えた4人姉妹が当時を振り返るという視点から描いて、"少女時代との訣別"という新たな物語に描き直しつつ、原作本来の魅力である"少女時代だけが持つかけがえのない輝き"も生き生きと描かれるのだ。この斬新な演出が何より魅力。有名なエピソードを省略する思い切りのよさもいい。4人姉妹それぞれの選択をすべて肯定し、どの歩き方にも声援を送る物語もいい。また、同世代女優4人の競演も見もの。末っ子エイミーの解釈が興味深く、この役を演じたフローレンス・プーが光る。

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相馬 学

なぜ今、『若草物語』なのか?

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 今なぜ『若草物語』なのだろう? そんなことを考えながら本作を見ていたが、結論から言うと現代に通じる女性の自立、という点に尽きる。

 次女ジョーの妥協しない創作姿勢や、末娘エイミーのレディーへの能動的な変ぼうの強調は、その表われ。『レディ・バード』で注目されたG・ガーウィグが監督に起用されたのは必然的で、心理描写はあくまで丁寧だ。

 長女や三女の存在感が薄い点は原作のファンには気になるところかもしれないが、それでもオスカーにノミネートされたふたりの旬の女優の好演は見どころ。とりわけ『ミッドサマー』に続いて複雑な感情を表現したF・ピューがイイ味を出している。

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森 直人

めちゃくちゃ優秀なモダンクラシック

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

古典名作を再構築した最新コレクション――といった趣だが、ガーウィグの良さは過剰に尖らず、中庸の域に収めるところ。オリジナル(原作小説)の保守的な結末は、出版社のおっさんからの抑圧(要請)でやったのよ!という“脚色”は象徴的。『天才作家の妻』や『メアリーの総て』にも通じる男性中心主義への逆襲をユーモアで包み、歴史の“改変”ではなく批評的に想像力を加味した、このさじ加減がとにかく上手。

『レディ・バード』に続き次女ジョー役のS・ローナンが、トリュフォーにとってのJ=P・レオー的に快演するが、彼女へのコンプレックスを抱く末っ子エイミー役、フローレンス・ピューの存在の濃さがさらにキモ。

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村松 健太郎

現代にも通じてしまう皮肉

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

100年以上前の社会と女性を描いていますが、現代社会に通じてしまう問題を描いているのがあまりにも皮肉です。アカデミー賞監督賞からノミネートが漏れるなど映画自体が物語を抱える問題を体現してしまっている感じがします。
「レディ・バード」のグレタ・ガーウィグ監督とシアーシャ・ローナンのコンビの仕事は見事です。
文句なしです。
コロナ明けで鑑賞条件が厳しいところもありますが、できるだけ多くの人に見られることを祈っています。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

モダンで新鮮なアプローチを狙ったのはわかるが

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

「レディバード」の女性監督が、超豪華キャストで傑作古典小説を映画化とあれば、当然ときめく。しかし結果は中途半端。現代の観客のためにモダンでフレッシュにアプローチしたのは明らかながら、功を奏していないのだ。たとえば時間が行ったり来たりするのは不必要な混乱を招くし、ストーリー展開上、良いリズムが出ているわけでもない。おそらく「見せ場」のつもりであろう、当時の女性の社会的立場についての長いセリフも、ただ説教くさい。あんなふうにあからさまでなくても、ストーリーの語り方で、そこは伝わるはず。見終わった後、静かに、しかしいつまでも感じさせることこそ、より優れた監督の手腕。今作にはそれがない。

この短評にはネタバレを含んでいます
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