TENET テネット (2020):映画短評
TENET テネット (2020)ライター9人の平均評価: 4.3
順行と逆行の狂気のバトル!行の逆読み可能な文章で敬意を表す
映画にはまだ可能性が残されている
近頃はそんな考えも当てにならない
野心的な実験が成功する確率は低い
タイムトラベルとは異なる逆再生劇
その装いは精緻なスパイアクション
世界の終末を懸けて戦う壮絶な奇景
驚くべきことに敵は逆行する未来人
全てはエントロピー減少が成せる業
順行の現代人と入り乱れる異様な画
カオスを前に脳内を嵐が吹きまくる
そんなことすら考えるな感じるんだ
何度でも観てユリイカ!と叫びたい
無理に頭で理解しようとせず流れに身を任せるべき
クリストファー・ノーラン待望の最新作は、政府の秘密組織から極秘ミッションを任された名もなきスパイが、過去と現在の時間を逆行させることで、世界破滅を目論む黒幕の陰謀を阻止しようとする。基本プロット自体はなんとなく『ラ・ジュテ』×ジェームズ・ボンドといった感じなのだが、しかしストーリーやコンセプトは容赦ないくらい複雑かつ難解なため、物理や化学が苦手な筆者にはまるでチンプンカンプン(笑)。このモヤモヤする置いてきぼり感は『インターステラー』以上かもしれない。それでも感覚的に何が起きているのか十分に把握できるので、むしろ無理に頭で理解しようとせず流れに身を任せる方が正解なのだろう。
『インセプション』を越える!?リピーター映画
一度見ただけで、この物語を完璧に理解できる人がどれほどいるのだろう? 『インセプション』をより複雑にしたような構造というか、劇中で語られる設定的ルールが多く、ひと言を聞き逃すとワケがわからなくなるだろう。
とはいえ退屈とは、まったく無縁だ。映像の圧倒的な迫力。特撮やデジタル加工は『インセプション』よりも控えめだが、時間逆行描写を含め、2時間半退屈させることなく一気に見せ切るノーラン・マジックに改めて脱帽。
『インセプション』がそうであったように、本作も多くのリピーターを生むだろう。二度目の方が一度目より理解が深まり、パズルのピースはさらに埋まってノーランの哲学により近づけるのだから。
四次元と五次元の次は時間を超えたノーラン節
タイムトラベルものの概念を軽々と超えたC・ノーランの世界観と独特な映像美に圧倒されっぱなしの2時間半! SF脳じゃないので時間の逆行の理論に最初は戸惑ったが、映像で理解させるのはさすがの演出力といえる。順行と逆行をひとつの画面に納める画期的な絵柄にただ感動。ガジェット関係もめちゃくちゃかっこいい。主人公のミッション遂行と同時に発生する数々の謎を、最後にきちんと組み合わせてパズルを完成させる展開にカタルシスというか達成感を感じる。ご贔屓のE・デビッキがドSな夫に苦しめられるヒロインを熱演していて、彼女とドヤ顔のK・ブラナーとの対決では胸がスカッとした。
いかにもノーランな離れ業で伏線回収
“ノーラン版『007』”だけに、かなりベーシックなスパイ・アクションであり、デンゼル・ワシントンJr.を起用した『デジャヴ』オマージュ。そんななか、逆再生による時間の逆行でストーリーを展開させながら、回文タイトルが示すように、時間の衝突を起こすことで、伏線を回収していく離れ業をやってのける。これだけの大作にも関わらず、主人公に名前がないことや赤と青の使い分けなど、考え始めたらキリがないため、初見の際は何も考えず、怒涛の流れに身を任せた方がベター。相変わらず、音に対するこだわりもハンパなく、まさに「ようこそ映画音響の世界へ」な仕上がりだが、そのぶんセリフが聞き取りにくい。
構造を愉しみ、場面の解読に興じるところに醍醐味あり
"ストーリーの構造"を愉しむ映画。冒頭から「時間を逆行して動く物体」の存在が提示され、それがこの物語のキーになることが示される。通常は一方向に流れる時間が逆行することもあるのなら、ストーリーはどのように進み、あるいはUターンするのか。それを賞味する映画であることが、最初から宣言されるのだ。そしてその観点で見て面白い。
ただし、この映画の"時間"は一般のSF映画とは異なる"本作独自の法則"に沿うので、その法則の説明時には注意して聞く必要がある。さらに、あえて説明されず、それならこれはこういうことなのか?と見る側の推察に委ねられる場面も多数。その解読を試みることも、この映画の醍醐味になっている。
オール理解は不可能。あえて矛盾も? でも観てるだけで快感
時間逆行のルール、主人公たちが探す人類滅亡のカギを握る物体の謎など、脳細胞を必死にフル回転させて理解しようとするも、あえて複雑な用語が使われてノーランに鼻で笑われる感じ。2回観たところ新たな発見も多かったが、明らかに展開に矛盾は起こっているし、過去か未来か説明できない重要なシーンもあったり、答えのないパズルに挑む感覚では? しかし1回でも何となくの回答は得られるし、冒頭のテロから、要所の逆行アクションの数々には、全身の毛が逆立つような興奮とテンションが途切れず、まさにスクリーンで映画を観る喜びに身悶えした。キャストもあえて過剰な演技をして、ふざけたセリフを放ったりと、超濃厚な2時間30分。
ノーラン映画タイムサスペンスの最高峰
ノーラン監督の十八番であるタイムサスペンスの最高峰と言っていい作品。
最近はタイムリープ映画が増えて、時間旅行の表現方法や理屈もだいたい定番化してきていたが、天才ノーランはナナメ上というよりも全く別次元のアプローチをしている。
理屈を考えようとすると映画に集中できなくなるので、映像の斬新さを体験するつもりで観るのがおすすめ。音楽と映像のシンクロはまさにアート。そしてあまりの緊迫感に映画終了後は、さわやかな疲労とカロリー消費を実感する。
エモーショナルな部分が究極の家族愛を表現した『インターステラー』のようなカタルシスを感じるまではいかなかったので星一つマイナスするが満点でもいい映画。
概念の革命
一作品ごとに事件になり続け、もうないだろうというこちらの思いを毎回軽々と超えてくるノーラン最新作。
これまでも好んできた時間というテーマをより一層ダイレクトに描き出している意欲作で実験作でもあります。オリジナル脚本&ノンスター映画にここまでの破格の製作費を投入できるのは今はノーランぐらいですね。
時間の概念、映画の概念を思い切りひっくり返されるのを少しでも大きなスクリーンで体感してください。
ハリウッドメジャーが開店休業状態の中で映画の復興を一手に担う役割にも期待です。