トゥルーノース (2020):映画短評
トゥルーノース (2020)ライター3人の平均評価: 3.7
実写で見たら、トラウマ必至の生き地獄
北朝鮮の悪名高き収容所の実態を詳らかに描いていて、人権を剥奪される恐ろしさに息が詰まる。脱北者や収容所に関わった人々の証言から構成されたリアルさなので、アニメーションという手法に感謝。これを実写で見たら、トラウマになるだろう。生き延びるために心を麻痺させなくてはならない、過酷な生き方を強制される人々が存在する国とは何なのだろう? 猛烈な怒りが込み上げてくるが、生き地獄に放り込まれても人間性や優しさを失わない母娘に心洗われる。極限下で試される人間性と希望の物語であった。しかし、収容所には拉致された日本人がいたという証言があっても救出することもできない現状は実に腹立たしい。
報道されない北朝鮮の現実
ホロコーストとは、だいぶ異なる北朝鮮の強制収容所の恐るべき実態。劇中には韓流ドラマやK-POPといった南が生んだエンタメが登場するなど、現在進行形の出来事であることが、カンボジアが舞台の『FUNAN フナン』との大きな違いだ。主人公が頼もしくなり、地獄のような日常に対応していく様は、『この世界の片隅に』に通じるものがアリ。また、アニメ版『ムーラン』の音楽監督を起用したのも、思わず納得の高まるスコアもアリ。一見チープに見えるポリゴン風なキャラクター造形も、世界市場を狙った英語セリフの狙いも、悪趣味一歩手前の感触だが、それなりの効果を出している。ただ、好き嫌いが分かれる一本でもある。
目を覆う北朝鮮の惨状が、温もりテイストアニメで異次元の体験に
北朝鮮で強制収容所に囚われた家族の運命は、予想どおりとはいえ、壮絶を極めるサバイバルと化す。これから観る人のために具体的な説明は避けるが、もし実写で描けば、正視できないホラーのレベルになっただろう。しかし作り手の狙いは的確で、3Dアニメで描くことで、目を覆う惨状にワンクッション置くことに成功。3Dと聞くと最先端のようだが、キャラクターが折り紙のテクスチャーなので、「絵本」の愛おしさが加わる。悲劇の題材が、温もりのある表現によって感動が喚起されるわけで、その効果は、『火垂るの墓』や『この世界の片隅に』に近いかも。シンプルさを基盤にしつつ、人々の表情、光、吐息、大地など細部へのこだわりも上級。