アンビュランス (2022):映画短評
アンビュランス (2022)ライター6人の平均評価: 3.5
オリジナルから60分増の高カロリー大作
オリジナルのデンマーク映画『25ミニッツ』の60分増という尺から分かる、高カロリー大作。もちろん、ドラマパートを膨らませてはいるものの、「なぜ、爆発!?」「なぜ、ガトリング銃!?」という怒涛の救急車アクションが続く。そんな疑問に対し、「それは“破壊王”マイケル・ベイ監督作だから!」という一言で解決できる分かりやすさ! ジェイク・ギレンホールを生かしきれない脚本の緩さはあるが、煽りからの回転といったおなじみのカメラワークが健在なうえ、セルフパロディやら、もうひとつの主人公であるLAの街並みの捉え方もさすがの一言。久しぶりに、劇場の大スクリーンでベイ体験できる悦びに、★おまけ!
懐かしい'90年代マイケル・ベイ映画の匂いがプンプン
裏社会に生きるヤンチャな兄と、退役軍人の真面目な弟。妻の医療費に困った弟が兄貴の銀行強盗に加わったところ、ひょんなことから計画が狂って仲間は全滅、自分たちも救命士と患者を乗せた救急車をジャックして逃亡する羽目になる。いやあ、ノリとしては『バッド・ボーイズ』や『ザ・ロック』。’90年代の懐かしいマイケル・ベイ映画の匂いがプンプンする。基本的にリアル志向のアクションに徹しているため、荒唐無稽に振り切った前作『6アンダーグラウンド』が大好きな筆者は少々食い足りなかったが、あくまでそこは個々人の趣味の問題でしょう。臨場感たっぷりのカーチェイスも見応え十分。ただ、もうちょい尺を削っても良かったかな。
スリル満点、21世紀の“走れ走れ!救急車!”
『トランスフォーマー』シリーズなどの型破りなSFアクションの印象が強いベイ監督だが、現実味のあるライブアクションもこなすのは『13時間 ベンガジの秘密の兵士』でも明らか。本作はそれをさらに推し進めた感がある。
まず主要キャラの気持ちやこだわりをしっかりとらえているので、観ていて共感を抱きやすい。救急車内の彼らが窮地に陥る度にスリルは加速し、ハラハラしながら見守ることになる。
そしてやはりアクションだ。今回はハンディカムだけでなくドローンを駆使して、アクロバティックな空撮を敢行。ロサンゼルス市街ロケの効果も手伝い、カーチェイスは生々しい迫力を醸し出す。緊張感が途切れない136分。巧い。
カメラがアクロバティックによく動く
カメラがよく動く。遠くから高スピードで被写体に接近したかと思うと、そのまま急降下して水平移動する。そうしたアクロバティックな動きが多く、その動きに身を委ねていると、こちらの身体もカメラと一緒に動いているような感覚が味わえる。このカメラワークの醍醐味を体感するために、スクリーンのサイズはできるだけ大きいほうがいい。
そのようにカメラが動き続けるので、従来のマイケル・ベイ監督作よりも爆発の数が少ないのに、映像の派手さはいつものこの監督流。それでいて、ドラマは大味ではない群像劇。偶然そこに居合わせてしまった人物たちの、それぞれ異なる背景と背負うもの、そして心境の変化が盛り込まれている。
過剰な思いの丈
プロデュース作品ばかりで、監督作品が映画館から遠ざかっていたマイケル・ベイの久しぶり監督作品。
そういう気持ちは監督にもあったのでしょうか、過剰なまでの思いの丈がさく裂した映画になっております。
なぜ、そんなぐるぐると回り、右に左に、上に下にと動き回るカメラワークにするのか? なぜ、そんなに車がぶっ壊れるカーチェイスが続くのか?ストーリーを考えるとそこはなくてもいいんじゃないか?と思ってしまう部分もありましたが、流石はマイケル・ベイという感じでもありました。見ていて若干酔いました。序盤の自作を絡めたギャグシーンはニヤリとさせてくれます。
やはり「やり過ぎ」だけど「面白い」。自虐も入れる監督の余裕
徹底的に臨場体験型アクションの極限に挑むマイケル・ベイ。凄まじい勢いのカットつなぎ、極端にローアングルを多用するカメラにより、没入スリル度は異常レベルを記録。観る者を無雑作な勢いで巻き込み、なおかつ何が起こってるかわからせる。これは映画ではなく、凶悪犯罪現場の「体験」か。
犯人と被害者を乗せた救急車が止まるに止まれない『スピード』的状況をキープさせるため、中盤には目を疑う試練も用意されるが、面白い演出ありきで展開の無理矢理さが気になったり、夕方になった後に昼間の天気に戻るなど、ツッコミどころ多いのもベイ作品らしく微笑ましい。自作を自虐パロディする余裕に爆笑。多様性アピールもサラリと挿入し好感。