キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性 (2012):映画短評
キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性 (2012)ライター3人の平均評価: 3.3
映画というものの変化も見えてくる
映画のキャスティングとはどのような仕事なのかが垣間見られる、舞台裏ものとして面白いが、それに加えて、キャスティングという観点から、映画というものの変化を捉えているところも興味深い。本作の主人公である伝説的キャスティング・ディレクター、マリオン・ドハティが1970年代に登場できたのはなぜだったのか。彼女の行動に代表されるようなキャスティングに関する意識の変化によって、映画はどのように変わったのか。そうした映画の歴史も映し出されていく。
それと並行して、主人公のドハティはじめ、マーティン・スコセッシやロバート・デ・ニーロら現在も活躍中の大御所たちが語る、名作映画の裏話の数々も面白い。
傑作映画の意外な裏話も。語られなかったハリウッドの歴史
キャスティングのすばらしさについて聞かれると、ウディ・アレンはいつも「ジュリエット・テイラーのおかげ。自分が聞いたこともない役者を推薦してくれるんだ」と、頼りにしているキャスティング・ディレクターを絶賛していた。今作には彼女も出てくるが、中心は彼女の恩師で、この世界の伝説であるマリオン・ドハティ。スターや監督のコメント、映画の映像を織り込みつつ、名作の裏でこの人たちがどんな貢献をしたのかが語られていく。意外なことだらけの裏話はとても楽しいし、ハリウッドの歴史を知る上でも貴重。そして、この職業にいまだにオスカーの部門が与えられないことについて考えてしまう。
映画好きはもちろん必見。そうでなくても人生のヒントに
映画ファンなら作品のオープニングなどで目にしたことのある、この仕事。映画を成功に導くためにいかに重要な仕事なのかが、巨匠やスターの熱い賛辞から強烈に伝わる。そこにハリウッド名作の歴史が重なるので自然とテンションもアップ。中でも『リーサル・ウェポン』の主演コンビ決定の秘話には感動せざるをえない。作品自体は10年前制作なので、その後亡くなった何人かの才能が元気にインタビューに答える姿で感傷的な気分にも。
とはいえマニア向けの作りではなく、第一人者となった人物の開拓精神や、「経験」と「直感」を頼りにする姿勢、何より他人の才能を引き出すセンスなど、仕事の枠を超えて参考になるポイントも多いのである。