呪呪呪/死者をあやつるもの (2021):映画短評
呪呪呪/死者をあやつるもの (2021)ライター5人の平均評価: 3.4
前代未聞のゾンビ軍団カーチェイスは必見!
死後数か月の「死者」による殺人事件が発生。追跡取材を始めた女性ジャーナリストは、やがて大手製薬会社の陰謀と不気味な呪いの渦に巻き込まれていく。韓流ドラマ『謗法~運命を変える方法~』の劇場版続編。テレビ版を見ていないと人間関係で分かりづらい部分はある。とはいえ、犯罪ミステリー×オカルト・ホラー×ゾンビ・アクションの融合はなかなか面白く、中でも『ワイスピ』も真っ青の壮絶スタントを繰り広げるゾンビ軍団カーチェイスにはビックリ仰天!こんなの他では見たことありませんわ!弱者の命が粗末にされ、上級国民ばかり守られるという、日本と全く同じ韓国社会の恥部に斬り込んだストーリーも悪くない。
ジャーナリスト&少女呪術師VS超高速ゾンビ軍団
弱者の視線を忘れない女性ジャーナリストと呪いで相手を四角く折りたたんで殺すのが得意な少女呪術師のコンビが、東南アジアからやってきた呪術師が操るゾンビたちと戦いつつ、悪辣な製薬会社の陰謀を暴く。ゾンビパニックホラーというより、呪術ゾンビアクション。超高速で動くゾンビ軍団とのカーチェイス(このゾンビたちは車を運転する!)は見もの。終盤はつい少女ゾンビに肩入れしてしまった。登場人物がおなじみの顔みたいな感じで次々と出てくるのは、ドラマ『謗法 運命を変える方法』の後日譚だから。事前に少しでもドラマを観ておいたほうが圧倒的に楽しめる(クレジット前のエンディングの意味もわかる)。
K-POPアイドルばりのルックが斬新な“韓国版キョンシー”
『寄生獣 -ザ・グレイ-』の完成も待たれるヨン・サンホ監督プロデュースによる変化球K-ゾンビ映画。今回の「ジェチャウィ」は呪術師に操られた死体なうえ、K-POPアイドルばりのルックとフーディーなファッション、そしてアクロバティックな動きが特徴なこともあり、まさに“韓国版キョンシー”といえるだろう。“人間がいちばん怖い”というサンホ作品おなじみのテーマに加え、『ファイティン!』のキム・ヨンワン監督が得意とするハリウッド大作感もプラス。ドラマ「謗法 運命を変える方法」の劇場版であるが、今度はスピーディーなテンポ感とエンタメ性を重視していることもあり、未見でも十分楽しませてくれる。
超高速可動ゾンビの変形版としても面白い
殺人事件の犯人は死後3ヶ月の死体だった?!という奇妙な事件を追って、ネット・ジャーナリストと呪術師が協力するというオカルト系謎解きミステリだが、"動く死体"がモチーフなので、一種の変則的なゾンビものとして見ることも可能。
その視点から見ると、脚本が『新感染半島 ファイナル・ステージ』の監督/脚本のヨン・サンホで、あの映画の超高速で動くゾンビたちがより進化したような趣も。身体が破損しても命じられた行動を止められないゆえの、人間とはかけ離れた身体の動き。個別に行動せず、多数の個体が同じ目的のために動くことから生まれる奇妙な集団行動。他のゾンビ映画にはない光景の数々が見もの。
中盤だけでも一見の価値あり
『新感染』シリーズで韓国ゾンビマスターの地位に就いたヨン・サンホが仕掛けたKゾンビ最新作。感染系ではなく呪術系のゾンビということで、映画のストーリー自体はかなりスーパーナチュラルな展開になっているために、物語としてはギリギリで成り立っている感もなくはないのですが…。それでも、パワフルかつ一糸乱れぬ集団ゾンビアクションのビジュアル面でのインパクトは抜群です。特に中盤に展開される集団群舞のような襲撃シーンだけでも一見の価値がある一作になっています。2時間弱の上映時間で中弛みすることなく、一気に駆け抜ける爽快感を是非映画館の大画面で。