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対峙 (2021):映画短評

対峙 (2021)

2023年2月10日公開 111分

対峙
(C) 2020 7 ECCLES STREET LLC

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.2

なかざわひでゆき

白熱する濃密な会話劇に息を呑む

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 とある教会の一室。6年前に起きた高校銃乱射事件で殺された少年の両親と、犯行に及んだうえで自殺を遂げた少年の両親が初めて対峙する。最愛の息子を奪われた悲しみと怒りをいまだ整理できず、加害者の両親をどうしても責めてしまう被害者の両親。しかし、彼らの前に現れたのは、愛情を注いで育てたはずの息子の凶行をいまだ受け止めきれない普通の両親であり、彼らの口から語られる加害者もまた血も涙もない怪物ではなく、ただ道に迷い自分を見失った怒れる普通の少年だった。世の中の不条理に我々はどう向き合えばいいのかを考えさせる作品。『XYZマーダーズ』も懐かしいリード・バーニーなど、役者陣の白熱した演技に圧倒される。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

ベテラン俳優4人による息詰まるセッション

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

まるで戯曲原作のような設定ゆえの、終始張りつめる空気感。脚本・演出を「コロンバイン高校銃乱射事件」の加害者と同い年であるフラン・クランツが手掛けているのも興味深いが、映画としてはやはりリヴァー・フェニックスの影がチラつくマーサ・プリンプトンら、ベテラン俳優4人の功績がデカい。事件から6年経て、「わざわざ傷口を広げる必要はあるのか?」と疑問を抱かせる序盤では、どこか空気を読めない部外者の言動もリアルに映し出され、いわゆるステレオタイプな修羅場にならない怒りを経て、赦しへと向かっていく。それゆえ、「集団」「集まり」以外にも「(カトリック教会の)ミサ」の意を持つ原題がジワる。

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斉藤 博昭

4人全員オスカーノミネートでも良かったのでは…という魂の名演

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

被害者側と加害者側(とは言っても当人は死んでる)が面と向かう設定なので張り詰めた空気は予想どおり。とりあえず最初は穏やかな大人の対応も、じわり、じわり地雷的内容に触れていく。そのタイミング、緩急の流れが巧みに構成され、劇的瞬間の効果絶大。
言葉だけで無残な状況が手に取るようにわかる。真に迫る告白に俳優の魂が異常レベルで込もり、映画を観るわれわれも事件の真っ只中に放り出された感覚に。恐ろしすぎる追体験映画。
2組の親がメインだが、その場をセッティングする人たちの冒頭のやりとりがめちゃくちゃ自然だったり細部も怠りナシ。
何気ない日常がいかに大切か。ありきたりのメッセージがここまで響く作品も珍しい。

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平沢 薫

俳優の演技だけで画面に惹きつける

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 俳優の演技だけで魅了する。舞台は一部屋のみ。主要登場人物は4人のみ。観客がスクリーン上で見るものは、俳優4人の演技のみ。なのに、画面に惹きつけられずにはいられない。彼らはどんな関係なのか、各自がどんな思いを抱えているのか、それがどう変わるのか。それだけなのに目が離せない。

 監督・脚本のフラン・クランツは1981年LA生まれ、小学生の頃から演技を始め、俳優として活動してきた現在41歳。『キャビン』など70作以上の作品に出演しているが、監督も脚本も本作が初めて。本作の"俳優の演技"に特化して、それをじっくり見せる作劇術に、彼が俳優としての経験を通して得てきたものが反映されているのに違いない。

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猿渡 由紀

「許す」という、国境を越えたテーマを語る

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

もう何年も、アメリカでは学校での銃撃事件が多発してきた。それらの事件はただの数字ではなく、当事者たちにとっては人生を変えた悲劇。そして苦しみはずっと続くのだ。事件から数年後に顔を合わせた加害者と被害者の両親を見つめる今作は、そのことを強く思い出させる。フラッシュバックは使われず、何が起きたのかは会話を通じて少しずつ明かされていく。この密室劇を引っ張るのは、4人の役者による迫真の演技。筆者は今作を2021年1月のサンダンス映画祭で見たが、年末になっても最高のアンサンブル作はこれだと思った。アメリカならではの設定ながら、「許す」という国境を越えたテーマを語りかけてくる。

この短評にはネタバレを含んでいます
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