ノック 終末の訪問者 (2023):映画短評
ノック 終末の訪問者 (2023)ライター4人の平均評価: 3.5
原作ものですがシャマラン節健在
M・ナイト・シャマラン監督で原作ものというとちょっと嫌な予感がしなくもなかったのですが、ポール・トレンブレイの原作はびっくりするほどシャマラン的。
家族という最少の集団と世界の滅亡を並列で描くなんて言う物語を考え付く人が同じ時代に二人いるだけでもすごい話ですが、その二人が奇跡的に巡り合って、映画にまでなるとは。
パワーファイターキャラのデイブ・バウティスタがその体躯こそそのままですが、今までにない静かな演技を披露。思った以上に器用な俳優ですね。
終わっていく世界の描写は日本人にとってはなかなかに刺激的です。
ストーリーテリングと、サスペンス演出の巧さを堪能
ストーリーはシャマラン監督には珍しくオリジナルではなく、原作があり脚本も共同、昨今の異常気象と聖書の黙示録を織り交ぜつつ進むが、今回はそれよりも、この監督のストーリーテリングの巧さと、サスペンス演出の名手としての力を堪能する1作。突然、異常事態が起きて、今、目の前で起きていることは何なのかが、ごく少しずつ明らかになっていく。それと並行して、主要登場人物たちがどんな経歴を持ち、何を考えているのかも、フラッシュバックを交えて徐々に判明していく。その謎解きのような語り口が巧妙。その間にも、危険人物を閉じ込めた浴室のドアを開ける瞬間など、緊張感が急上昇する場面が続出し、シャマラン監督の技を再確認。
カムアウトした俳優だからこそ、完璧主義のシャマラン流を体現
前作に続いて原作が存在しつつ、相変わらずのシャマランのノリで脚本化・演出し、しかもポイントがギュッと絞られ好印象。とはいえ内容が内容だけに強烈な描写にも心の準備は必要。ユーモアの分量もシャマランの平均レベルからすると少なめ。冒頭から登場人物のアップを多用。基本はキャビン(小屋)内のドラマなので閉塞感・緊迫感がドラマを盛り上げる。
基本設定が唐突すぎて、やや説得力に欠けるのも「らしい」と許容範囲か。
シャマランが拘ったのは、ゲイのカップルに、ちゃんとゲイと公言してる俳優をキャスティングしたこと。それが功を奏したかどうか? つねに完璧を求める監督が、要所で俳優に“任せた”瞬間に答えを探せるはず。
まさに、究極の選択
幸せなLGBTQカップルと彼らの養子が暮らすキャビンにいきなり転がり込んできた4人組は、果たして聖人か? それとも狂人か? 導入こそ定番のホーム・インベーション映画ながら、そこは最後まで引っ張るシャマラン演出が冴え渡る。どんどん厭な展開になるなか、さりげに流れる「シャマランのTVショー」にニンマリ。各々の武器を片手に恐怖に陥れる「ヨハネの黙示録の四騎士」を思い起こさせる4人組には、「サーヴァント ターナー家の子守」繋がりからか、ルパート・グリントも参加。久しぶりにスクリーンで観る彼の姿も感慨深いが、出演作を重ねるうちに“いい役者”になったデイヴ・バウティスタの存在感には及ばない。