FLY!/フライ! (2023):映画短評
FLY!/フライ! (2023)ライター4人の平均評価: 3.3
カモ一家の大災難バケーション
空回り気味の父親率いる、カモ一家のバケーションものということで、明らかに『ホリデーロード4000キロ』オマージュ。前半の田舎ホラーな展開など、マイク・ホワイトの脚本らしい悪趣味要素も入って、なかなか見応えあるものの、その後はかなり既視感あるファミリームービーと化していく。見どころであるダイナミックな飛行シーンは『ブルー 初めての空へ』を観たときの感動には及ばず、群衆シーンは『チキンラン』に及ばずといったところ。イルミネーション・スタジオというよりは、バンジャマン・レネール監督の新作と言われた方がしっくりする出来栄え。ただ、子ガモのグウェンの変顔には妙に癒される。
翔んでみせろ!
イルミネーションのオリジナル脚本作品としては7年ぶり。鳥類を主人公にしている点が旨みといえる。
北米からカリブへと向かう冒険を俯瞰からとらえた映像に飛翔のカタルシスが宿る。主人公であるカモ一家の長が、飛ぶことに躊躇しているという設定が生き、いざ飛んだときの気持ちよさは格別だ。
冒険を避けたい父親という設定は『ファインディング・ニモ』の鳥類バージョンといった趣。こちらはよりアップテンポで、ユーモアを重視する。あっさりしている気がしないでもないが、ファミリームービーとして十分に楽しめる作品。
一緒に空を飛んでいる感覚が味わえる
飛行している時の感覚を、キャラの主観映像で描くのではなく、周囲の鳥たちと一緒に空を飛んでいる、という感覚が味わえる映像になっているところが新鮮。主役のカモの家族の隣で空を飛んでいる気持ちになれる。
広い世界を描く遠景は、戯画化されたキャラクターたちのタッチとはまったく別。細やかな光を捉える油絵のような筆致で描かれた秋の大自然ももちろんいいが、大都会での遊園地のライドのような障害物競走も快感。
ミニオンズのイルミネーション製アニメのギャグは子供が見ても分かる身体系が基本だが、鳥類のヨガ教室など大人向け風刺もチラリ。エリザベス・バンクス、オークワフィナが声を演じる個性派キャラも楽しい。
「飛ぶ」ことの爽快なアクションに全てが込められている
いま最も単純明快なファミリームービーの歓びを追求しているアニメスタジオがイルミネーションだろう。長編第14作の本作は、まさにシンプル・イズ・ベストを実現した逸品だ。渡り鳥の真鴨なのに、米ニューイングランドの自宅(=池)から外に出た事がない主人公一家との設定がまずユニーク。彼らが一念発起し旅立つ内容で、『SING』等にも通じる自己啓発的なメッセージが嫌味なく機能する。
監督は『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』の仏のバンジャマン・レネール。今回は3Dアニメだが、擬人化された動物達が情感豊かに躍動する素晴らしさは変わりない。適度にブラックユーモアが効いたマイク・ホワイトの脚本も良い仕事!