ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ (2024):映画短評
ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ (2024)ライター3人の平均評価: 4.3
アーサーの物語であり、ジョーカーの物語でもある
アーサーがジョーカーの存在に驚いたように、トッド・フィリップス監督は前作『ジョーカー』の反響に驚いたのではないか。そこで付けたくなった注釈が本作だとすると、納得がいく。すべてが、前作にすでにあったものから派生しているが、前作を損なうことはない。アーサーの物語でもあるが、彼とは別にさらに一人歩きをしていくジョーカーの物語にもなっている。
音楽と舞踏は今回も雄弁。アーサーの抱く想いは、前作の踊りのようなものから派生して、スタンダードソングを歌って踊る古典ミュージカル風情景となって何度も出現し、そのたびに古風なロマンチシズムで魅了する。エンドロールの最後に流れる曲も胸を打つ。
賛否あることが続編としての意味があることに
なんと言ってもあの『ジョーカー』の続編です。それだけで一朝一夕でできる映画ではないことはわかっていました。結果として歌と狂気の愛に包まれたサスペンスとなりました。映画に関してはすでにプレミア上映などを経て賛否が真っ二つ割れているようですが、個人的にも賛否の感想が同時に芽生える映画となっていました。ただ『ジョーカー』の続編としてはこの賛否の割れ方は正しい在り方かとも思いました。もっと万人受けする続編も作れたかもしれませんが、それが後年になって支持を得続けられるのかと考えると、それは難しいかもしれません。『ジョーカー』の続編としてはこのぐらい振り切るのが正解なのかと感じました。
ミュージカルとして傑作。それ以上でもそれ以下でもない
「前作と同じものにしない」というT・フィリップスの意気込みがみなぎる作り。基本的にジョーカーの妄想=非現実シーンがミュージカルに切り替わるのは『シカゴ』など数々の名作と同じスタイル。そこから現実シーンに歌が波及するのも自然。使われる曲もベタでクラシカルなナンバーが多いのだが、ストーリー、心情と歌詞の美しいシンクロに最後まで魅了された。まさにザッツ・エンターテインメント!
ドラマは異常なほどシンプル。そして前作に比べてショッキングな展開や描写が限定的のため肩透かしを食らう人も多いかも…だが、それゆえ奥底への探究心も募る。
ホアキンは、ただ転倒する瞬間など要所の信じがたい“芸”でまたも驚嘆させる。