ワイルド・スピード/ファイヤーブースト (2023):映画短評
ワイルド・スピード/ファイヤーブースト (2023)ライター6人の平均評価: 3.2
このまま終わったら流石に怒るぞ。
もしかしたらシリーズ中最低作。今まで見てきたものの焼き直しばかりで、ネタ切れが明らか。過去のキャラクター総動員だが、ほとんどなんの見せ場もなく出たり入ったりし、ただ殴り合っては消えていくという刹那的な展開に心底うんざり。しかも大風呂敷を広げまくったあげく、最後に「パート1」であることが判明する衝撃ったら! いくら前編だからって断片的な羅列が延々と続くだけで、物語の回収もほとんどなく、かなりのレベルを誇ったこのシリーズの汚点でさえあるだろう。また、敵のエージェント組織がスペクターのような名前さえ付けられず、単に「秘密機関」と呼ばれるだけなのも、あまりにも愛情がなさ過ぎて困ったものだ。
今回もファンが求めるものがたっぷり詰まっている
迫力満点で、ドラマとユーモアがあって、いい感じでばかげていているのがこのシリーズの魅力。今回もそれらの要素はたっぷり詰まっている。クライマックスの(いつもながら)ありえないカーアクションも爽快。昔のような超メロドラマ的恋愛要素がやや恋しい気が個人的にはするものの、20年以上もの間にキャラクターも歳を取ってきてもはや親になっているので、自然なこと。そうやってずっと見つめてきたキャラクターにまた会えるのは嬉しい。ただ、なんとなく見てきたか、初めて見る人だと、過去とのつながりがぴんと来ず混乱するかも。最後に用意されたサプライズもファン向け。シリーズ終了を目の前にますますギアアップしている。
ジェイソン・モモアのイカレたサイコパス野郎は新境地!
いよいよファイナルの次回作へ向けて、これが終わりの始まりなんだなあ…と深い感慨を抱かせるシリーズ第10弾。5作目の宿敵レイエスの息子ダンテが復讐のため現れ、自分が父親を奪われたように、今度はドミニクの大切なファミリーを奪おうとする。クレジットにないサプライズゲストを含め、過去作のファミリー総結集を大前提とした脚本は少なからず陳腐だが、しかし度肝を抜くクレイジーなカーアクションの数々はやはり圧巻だし、ジョーカーも真っ青のイカレた狂人ダンテを演じるジェイソン・モモアの怪演も見もの。御年91歳のリタ・モレノにブリー・ラーソンと、新旧オスカー女優の演じる新キャラも印象的だ。
特盛、増し増しの原点回帰
何より、原点回帰的なカーアクション主体の物語になったことをもろ手を挙げて大歓迎したいところです。
ファミリーを始め相変わらず特盛状態に、ジェイソン・モモアとブリー・ラーソンまで加わって完全に”増し増し”状態です。オスカー俳優からアメコミスターまでホントによく集めました。監督のルイ・ルテリエはこういうハッタリ勝負の映画はお上手です。ちょっと”いき過ぎ”が凄すぎて思わず笑ってしまう部分もありましたが、これがワイスピの正しい楽しみ方と言えるでしょう。どうやら3部作になりそうな完結篇のスタートとしては見事なスタートと言えるでしょう。
『トランスポーター』監督なりの、総括始まる!
じつは死んでないわ、“昨日の敵は今日の友”だわと、「少年ジャンプ」色強まるなかでの最終章始動! シリーズ最高傑作『MEGA MAX』を膨らせた復讐劇やざっくり復習コーナーなど、総括&同窓会ムード高まるなか、『トランスポーター』のルイ・レテリエ監督なりのデッカードVS.ハン戦やジェイソン・モモアとアラン・リッチソンの“Wアクアマン”激突などの遊び心も満載。『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』とちょい被る“鉄玉転がしローマ大会”や、まさに副題通りなクライマックスに高まる一方、“リトルBとジェイコブ叔父さん珍道中”など、キャラの化学反応を楽しむエピソードに力が入っているのも興味深い。
ローマを走るランボルギーニ。これぞカーアクションの真髄と興奮
最終章の前編(または第1部)なので、構成も「終わりの始まり」という印象。
前作で宇宙まで行ったので、どこまで吹っ飛んでいくか期待したところ、別方向に、しかもカーアクション映画の真髄を極めるベクトルにシフト。ランボルギーニのご当地ローマでの疾走が鮮やかで美しすぎ! 原点であるストリートレース復活は、もう少し長く観たかった気も。
複数の場所で同時進行するドラマは、各所を担ったキャラの特徴が生かされ、笑えたり、ハードだったり、エモかったり…と飽きさせない。重要なリンクは5作目「MEGA MAX」で、当時の映像と新たなカットのつなぎが巧妙で、P・ウォーカーが今も生きているように錯覚させ、涙腺を刺激。