マンデラ 自由への長い道 (2013):映画短評
マンデラ 自由への長い道 (2013)ライター4人の平均評価: 4
そして物語はイーストウッドへ続く。
ネルソン自伝の映画化だと知り、彼の意思を継ぐファウンデーションの神格化を嫌う高潔さを感じさせる作品。“モテまくりヤリまくり”なインテリ弁護士の境遇を捨て、「反政府テロリスト」となったのち非暴力主義へと変わる足跡を追いながら、「主役不在」の長く過酷な時間をアイコンとして背負った妻・ウィニーの闘いに大きな時間を割き、南アフリカを解放へと導いたもうひとりの立役者の業績と復権に心を砕いているのがいい。できればTVのミニシリーズ枠でもう少し細かく見せたいのが作り手の本心かとも思うが。ネルソンの政治家としての辣腕ぶりを知るには『インビクタス/負けざる者たち』を続けて観てね、といわんばかりの幕切れにニヤリ。
゛民主化の父゛の光と影
昨年12月にマンデラ氏が亡くなった時、世界中が泣いた。その涙の意味と人権問題について改めて考えさせてくれる伝記映画である。中でも本作がクローズアップするのは、27年間の投獄生活で地位と名声を得た一方で、失ったモノの大きさ。中でもウィニー夫人との決別だ。2人は反アパルトヘイト政策を唱える同志だったが、長い別居生活で方向性に隔たりが出てくる。時の流れは残酷だ。
原作はマンデラ氏の自叙伝である。そうした影の部分を詳らかにすることでより一層、弱者のために命懸けで闘った光の部分が際立ってくる。観賞後はきっと、真のリーダーはかくあるべし!と、日本の中央に向かって、叫びたくなるに違いない。
憎悪の連鎖が止む日が来るといいな。
アパルトヘイト(人種隔離政策)を撤廃した故ネルソン・マンデラ大統領の人生はよく知られていて、本作でメインとなるのも長い獄中生活。国家反逆罪で終身刑となった氏と仲間たちは入獄中も闘争を続け、平和的な手法で小さい要求を通していく。屈辱的な状況に負けない姿に活動家の真髄がキラリン。終盤のデクラーク大統領との駆け引きでも戦略家らしいしたたかさを見せ、まるでチェスのような緊迫感だ。歴史の1ページはこうやって綴られるし、やがて憎悪の連鎖が止まる日が来るとの希望を抱きたくもなる。マンデラ役のイドリス・エルバの瞳演技に要注目。武闘派時代の前半と平和主義に転じた後半とで異なる眼力を披露しているのが素晴らしい!
綺麗ごとの偉人伝に帰結しない人間臭さが魅力
原作がネルソン・マンデラ本人の書いた自伝であるだけに、通り一辺倒の伝記映画には終わっていない。差別と抑圧に耐える生活から一転して武装闘争に立ち上がった彼が、27年間の牢獄生活を経て許しの境地へと至る“魂の変遷”を辿ることで、マンデラの訴えた“自由と平等”の真髄を浮き彫りにする作品だと言えよう。
事実を美化しないことが映画化許可の条件だったらしく、マンデラの浮気癖などの泥臭いエピソードも多々あり。必要以上に白人を悪者に仕立てない賢明さも含め、血の通った生身の人間が描かれている。この種の映画は気が滅入ると身構える向きもあるかもしれないが、本作は決して重苦しくなり過ぎないサジ加減も良い。