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レヴェナント:蘇えりし者 (2015):映画短評

レヴェナント:蘇えりし者 (2015)

2016年4月22日公開 157分

レヴェナント:蘇えりし者
(C) 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.6

なかざわひでゆき

一人の男の悲劇と苦難を通して振り返る米国の黒歴史

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 熊に襲われ瀕死の重傷を負いながらも生還した、米国開拓時代の伝説的な探検家ヒュー・グラスの実話をヒントに、息子を殺された父親の壮絶な復讐劇が描かれる。
 念願のオスカー受賞を果たしたディカプリオの鬼気迫る大熱演もさることながら、前作「バードマン」に続くイニャリトゥ監督と撮影監督ルベツキのコンビによる、大胆かつ縦横無尽なカメラワークが圧巻。CG使えば何でも出来るよね、なんてレベルではない超高度な映像表現の数々に息を呑む。
 物語の背景にあるのは、ネイティブ・アメリカンに対する差別と迫害、そして開拓時代の発展を裏で支えた搾取と略奪。一人の男の苦難を通し、米国の黒歴史を振り返る作品だとも言えよう。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

3Dなしで情念を体感させるキャメラの存在感はディカプリオ以上

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 開拓時代を背景とする物語は、ごくシンプルな復讐譚。ディカプリオの執念の演技は凄絶極まりないが、話すことも身動きさえ出来ず、耐える時間が長い。映画史に残る作品へと高めたもの、それは撮影の力だ。自然光を貫き、ワンシーン・ワンカットに挑む撮影監督エマニュエル・ルベツキのキャメラワークが、役者以上の存在感を放つ。人間の視野にも匹敵する広角レンズによる長回しは、筆舌に尽くしがたい。イニャリトゥ監督にとって『バードマン』がスーパーヒーロー映画へのアンチテーゼならば、本作は3Dへの批評的見解である。大自然に放り出された人間の情念を、3Dという“飛び道具”を用いることなく体感させることに見事に成功している。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

北の凍てつく大地に、雲間から微かな光が漏れてくる

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 北の凍てつく大自然、その大地と空はどこまでも続く広大さで、地は雪に覆われ、空は雲に覆われて、熱と色彩を失っている。その雲の隙間から差し込む光の、微かな輝き。冷え切った大気の清浄さ。澄み切った水の冷たさ。そのすべてを、名カメラマン、エマニュエル・ルベツキが、自然光での撮影にこだわりフィルムに定着させようとする。これまで柔らかく滑らかな光を得意としてきたルベツキが、北の硬く冷たい光をどうとらえたのか、その成果はできるだけ大きなスクリーンで確かめなくてはならないだろう。
 大きな自然と小さな人間。冷たい自然と熱い身体。悠久と瞬間。その対比の物語を、ドラマの背後で映像自身が雄弁に語り続ける。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

不屈の魂がアメリカ人の心を揺さぶるのはわかります

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

開拓時代に伝説となった男の物語で、見どころは念願のオスカー獲得したレオと誰もが思うはず。彼は確かにアメリカ人の心の拠り所である不屈の魂を頑張って体現したが、私が目を奪われたのは、CGIで獰猛さが増した熊の熱演と残酷なまでに美しいDPエマニュエル・ルベツキによる映像美。A・アラウ監督と組んでいたころからルベツキのファンだが、今回のカメラワークは彼史上最高の出来映えといってもいい。何も食べないのに全然痩せないレオへの疑問や娘を探すアリカワ族の長が間抜けすぎる件を忘れさせてくれる。人相を変えたトム・ハーディーはじめとする役者陣の作り込みも素晴らしく、イニャリトゥ組の体育会系気質が垣間見えた。

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相馬 学

重厚なドラマも、ディカプリオの熱演も見逃せない

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 アカデミー賞の受賞結果からも明らかだが隙のない演出も、自然光を活かした映像も文句なしに秀逸。しかし何よりも歯応えがあるのは、それによって語られる物語だ。

 極寒の地でのサバイバルは言うまでもなくスリリングだし、怒りに支えられた生への執念は情念を感じさせ、バイオレンスもギラギラと映える。復讐から魂の救済へといたる主人公の内なる旅路も説得力があり、余韻を残す。

 そして、やはりディカプリオにふれておきたい。出ずっぱりだがセリフは極端に少なく、表情と肉体で主人公の感情を表現した熱演。その鬼気迫る姿にふれると、“これでオスカーを獲れなきゃ、一生ムリ”と思わずにいられない。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

必死すぎるレオの匍匐前進、ふたたび! 

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

劇場という密室空間から、-27℃のブリザード吹き荒れる未開の荒野へ。その設定だけでなくイニャリトゥ監督のドS演出も、長回し多用なルベツキの撮影も、すべてあれだけスゴかった『バードマン』の進化・発展形だといえる。つまり、冒頭から「これ、どうやって撮った?」とツッコミたくなる驚愕シーンが畳みかける。当のディカプリオもこれまで以上に自らの肉体を酷使し、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』で鍛えた(?)必死すぎる匍匐前進もふたたび披露。間違いなく、狂気にも似た役者魂を感じるだろう。シンプルなストーリーを含め、近年量産されるサバイバル映画でも抜群の仕上がりだけに、さいとう・たかを先生の意見も聞きたい!

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

世界トップの才能たちが全力で沸騰している

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

前人未到の領域に皆が一丸となって突っこんでいる。ディカプリオの熱演も実際凄まじく、ここでは野性と知性、スピリチュアルな志向と高い技術ががっちり融合し、パワフルに煮え滾っている。イニャリトゥの前作『バードマン』が大作主義への批評だとしたら、今回はミニマムな撮影隊による大作への真っ向勝負だ。

『ニュー・ワールド』辺りから先鋭化し、いまカメラによる「体感」を最も追究しているルベツキのデジタル撮影は、自然光のみを使った極寒の原野でのクリアな長回しに挑戦。坂本龍一のスコアも音響的な実験性を高め、身体に響くマジック・リアリズムの映画空間を誕生させた。まるで大自然を舞台にした新しいオペラのような大傑作だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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