シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア (2014):映画短評
シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア (2014)ライター3人の平均評価: 4
タイカ・ワイティティ監督のセンス&才能がダダ漏れ
この数年、“第二のピーター・ジャクソン”として大ブレイクを果たしたタイカ・ワイティティ監督のセンス&才能がダダ漏れした出世作。しっかり“ナチス出身者”もいる、ひとつ屋根の下のヴァンバイアは『イーグルVSシャーク』(Tiff上映されたきり)などと同じ、愛すべき負け組たち。そんな彼らの日常に迫り、『ロストボーイ』『ブレイド』などの小ネタ満載の脱力系コメディであると同時に、しっかり身の毛もよだつホラーとしても成立させており、その緩急の巧さも見事だ。ドキュメンタリータッチの作風やCG処理の巧さは『クロニクル』にも似ており、だからこそ『AKIRA』の監督候補だったことにも納得できてしまう。
バルカン・ロックな音楽もナイス!
「ザ・ニュージーランド・ドキュメンタリ・ボード」なんて架空組織のロゴから始まる本作、そういやモキュメンタリ史上の傑作『コリン・マッケンジー』もNZ人ピーター・ジャクソンの作だったよなと思い出させる芸の細かいコメディだ。“敵対者は狼男族”みたいな昨今定番化した設定含め、ジャンルの伝統的ルールはもちろん遵守。ノスフェラトゥから例の伯爵まで各種揃った吸血鬼コミューンは、すなわちモラトリアムの戯画なのだけれど、そこに異種(この場合、とことん気のイイ人間)が闖入すれば?というシミュレーションも新機軸で面白い。齢取ってしまった元カノがいる養老院の前で佇む吸血鬼、なんておセンチなショットにもグッときます。
ヴァンパイアという名の社会不適合者たちが醸し出す悲哀
現代のニュージーランドで共同生活を送るヴァンパイアたちの日常を追いかけたドキュメンタリー…という設定の最高にバカげたホラー・コメディである。
十字架やニンニクが大の苦手、太陽の光を浴びると焼け死んじゃうなどなど、吸血鬼のお約束事を茶化したギャグは予想以上に抱腹絶倒。しかし、ただ単なるパロディの寄せ集めには終始しない。
定職にも就かず昼間は寝てばかり、夜になると外へ繰り出し、クラブでナンパしたりバーで酔いつぶれたり。下手に何百年も生きているから自尊心だけは強い。そんなヴァンパイアの不平不満やら友情やらを通して、社会に適合できないダメ人間たちの悲哀を浮き彫りにした人情味こそが本作の面白さだ。