ゴーストバスターズ (2016):映画短評
ゴーストバスターズ (2016)ライター7人の平均評価: 3.1
女性版ブロマンス的なものは最後の最後にちょっとだけ。
映画が公開される前から何だかんだウルサかった本作だが、いやこれは性差別がどうのこうの以前の問題で、単にひたすらスベりまくる笑いが痛々しい。快作『ブライズメイズ』の面々をせっかく起用したのに、中途半端にオリジナルの1作目をなぞってしまったせいか、まったく弾けない。そもそもオリジナルがあれだけのコメディアン揃えたのに面白くもなんともない映画だったしね(当時はSFXに踊らされていたのだ)。いっそ脚本も『ブライズメイズ』のようにK.ウィグに任せればよかったと思うのだが。ただ、男性的視点が偏向する社会の揶揄であろうC.ヘムズワースのバカ秘書っぷりは当たり役すぎてカワイイのなんの(笑)。
普通にめっちゃ楽しみました!
『あまちゃん』でもレイ・パーカーJr.の主題歌が使われてたなあ…と思い出しつつ堪能。懐かしネタ満載なのに「今の映画」として楽しめるのは、やはり(宮藤官九郎と同様に)時代への批評的な距離感が適切に利いてるからだろう。「80年代」ってよりむしろK・ウィグ(73年生)らの世代性が強く、『ピクセル』のずぶずぶノスタルジーとは似て非なるもの!
オリジナルからの「男女逆転」も完全に時代的な必然だ。実質『ブライズメイズ』のリメイク(応用)でもあり、日本でも女芸人4人組によるカバーMVが話題になったが、確かに椿鬼奴がよく出ていた頃の「温泉同好会」に近いよ。『イッテQ』でいうと手越的なC・ヘムズワースは最高!
懐かしいレトロ感も魅力のナイスなリブート
ご存知、’80年代を代表する大ヒットコメディの女性版リブートに当たるわけだが、オリジナルのアイヴァン・ライトマン監督やダン・エイクロイドが製作陣に加わっていることもあり、しっかりと旧作のスピリットを継承しているところがファンには嬉しい。
下手に今風のハイテク感を押し出さず、笑いのセンスを含めて、どことなく懐かしいレトロ感が漂うのも好感触。オリジナルキャストや懐かしのゴーストたちも、ちゃっかりと顔を出してくれる。
確かに他愛のない映画ではあるが、夏休みに家族揃って楽しめるイベントムービーとしてはこれで十分。おバカな観賞用イケメンを嬉々として演じるクリス・ヘムズワースもなかなか微笑ましい。
見どころは、幽霊退治じゃなくてヲタ女子たちの友情
コロンビア大学の終身雇用保証権ゲット寸前の物理学者が幼なじみとともに「ゴーストバスターズ」を設立し、幽霊退治に奔走という展開はほぼオリジナルのまま。旧作メンバーのカメオ出演もある。ただしメインの事件に関わるくだりは別物になっていて、旧作ファンも安心して楽しめるはず。随所に散らばったジョークににやり。主人公を女性に変えたことでヲタ女子の友情ドラマという側面が加わったのもプラスだろう。クリスティン・ウィッグ&メリッサ・マッカーシーの鉄板ぶりに加え、SNL組のケイト・マッキノン演じるエキセントリックな天才エンジニアが魅力的。彼女は歌もすごく上手でびっくり。C・ヘムズワースのビーフケーキっぷりも最高!
女性がゴーストを倒したって、いいじゃないか!
主人公たちが男だろうが女だろうが面白いモノは面白いワケで、“女を主人公にするな!”という批判は当然お門違い。“幽霊を見た!”という女性への冷遇から英雄化への痛快さの振り幅はオリジナルを超えている。
理系女子にも色々あって、クリステン・ウィグのコンサバ志向も、メリッサ・マッカーシーの我が道を行く的スタイルもハマっている。実力者であるコメディ女優が、それぞれにキッチリいい仕事を披露しているのがイイ。
が、本作のMVPは、クレイジーな工学者にふんしたケイト・マッキノンだろう。キャラも見た目もオトコマエ。理工オタク過ぎて、まったくゴーストにビビらないパンクなキャラに惚れた。
あの俳優やあのゴーストも再登場!
普段のサイズならキュートなモノが、極端に巨大化して動き出すと、それだけで恐ろしい存在に見えてくる。この部分が「ゴーストバスターズ」シリーズの個人的なお気に入りポイントなので、本作がこのコンセプトの継承を意識しているところがナイス。
バスターズを演じる女優4人は、オリジナル作のビル・マーレイやダン・エイクロイド同様、米コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」で活躍の面々、監督は彼女たちとコメディ映画で組んだポール・フェイグ、とくればギャグの応酬はお手のもの。前述の2人やシガニー・ウィーバーらオリジナル作のキャストたちが別の役で出演、オリジナル作のあのゴーストが再登場するのも楽しい。
一部で騒がれた酷評をブッ飛ばす面白さ。
5年前、『ブライズメイズ』の監督&主演2人が、幾度も囁かれた3作目~リメイクの企画を実現させるなんて、誰が想像しただろう。間隔を置いて登場するカメオら、オリジナルをリスペクトしながら、さらにヒドい目に遭う新展開に、グローヴやガンなどの新ガジェット、おまけに徹底的にボケ倒し、エンドロールまで乗っ取るクリ・ヘム! しかも、シネスコサイズのスクリーンを飛び出す、いやハミ出してしまう驚異の3D技術。オリジナル世代なら、文句ない夢のような仕上がりだ。それにしても、『ドラゴン怒りの鉄拳』上映館前でゴーストと戦うケイト・マッキノンがカッコ良すぎ。彼女主演で『タンク・ガール』のリメイクが観たいものだ!