ターザン:REBORN (2016):映画短評
ターザン:REBORN (2016)ライター4人の平均評価: 3.5
まさにジャングルの王者、降臨!
E.R.バロウズの原典を指向した映画なら、ヒュー・ハドソンの『グレイストーク』という傑作が30年前にあったが、爽快さではあれを凌ぐ新生ターザンの誕生だ。ベルギーのコンゴ収奪という歴史的背景や、南北戦争くずれのインディアン殺戮者(S.L.ジャクソン)を語り部的役割に置くなど文明の衝突への真摯なアプローチはあるにはあるが、大枠はあくまでお姫様救出の古典的冒険活劇。壮絶なクライマックスはまんまワイズミュラー版ターザン風で、そんなキャラだっけ?なアレクサンダーくんのビルドアップにもちょっと驚く。ハリポタじゃ個性が死んでたD.イエイツだが、映像美といい語りの巧さといい、やはりタダ者じゃなさそうだ。
ジャングルの王者ターザンが欧州帝国主義に立ち向かう!
言うなればターザンの後日談。英国貴族社会で息苦しさを感じるグレイストーク卿ことターザンが、植民地支配の魔手から故郷コンゴと妻ジェーンを救うために立ち上がる。
当時のヨーロッパ帝国主義を、現在の金融資本主義になぞらえているのは明白。しかも、悪役はコンゴ人の生首をベッドの周りに飾っていたなんて物騒な伝説を残すレオン・ロムなのだから敵に不足なしだ。
まあ、いくらジャングル育ちだからってそりゃないだろう的なツッコミどころは満載だし、CGで出来た動物たちも「ジャングル・ブック」に比べると雑な仕上がりだが、最後まで飽きることなく楽しめることは確か。アレクサンダー・スカルスガルドの肉体美も見事!
後期『ハリポタ』監督作だけに、優等生な仕上がり
『グレイストーク』から33年。ターザン映画の定番の流れ、ターザンとジェーンのロマンスを過去の産物とし、名家の人間として文明社会に生きる男の苦悩を描く着眼点はかなりいい。ちょいとジェーンに尻に敷かれる感は今っぽく、そこから彼女の救出劇となる展開も無理がない。もちろん、スタッフの“これぞ『スパイダーマン』の元ネタだ!”の声が聞こえてきそうなジャングルでのツタ・アクションもかなりスピーディー。ただ、『ハリポタ』後半戦を無難にこなしたデイビッド・イエーツ監督だけに、あまりに優等生な仕上がりで、クリストフ・ヴァルツも悪役も想定内。脚本を書いたクレイグ・ブリュワーが監督していれば、もっと突き抜けたはず!
ターザンが次第に生まれ直していく
タイトル通り、ターザンがもう一度生まれ直す。が、いきなりではない。今は英国貴族である彼が、アフリカを再訪し、少しずつ、ターザンとはどういうものだったのかを思い出し、再確認しながら、ターザンである自分を取り戻していく。
映画の冒頭から新しい解釈で描かれているのは、ターザンではなく、ジェーン。彼女は、ターザンに保護され救出される存在ではなく、彼と出会った時から彼と対等で、自分の明確な意志を持つ存在として描かれる。
斬新なのは、ジャングルの色彩と質感だ。この密林は蒼い。湿気が多く、光と熱の量が少ない。この風景は、アフリカ再訪時の主人公の心理状況を映し出しているのだろうか。