ワンダーウーマン (2017):映画短評
ワンダーウーマン (2017)ライター6人の平均評価: 4.5
世界も、DCユニバースも、彼女が救う!
女性監督の起用がどう出るのか気になっていたが、成功と言える内容。スピードとスケールを兼ね備えたアクションや、ガル・ガドットのチャームもあり、大いに楽しめた。
戦争を止めさせ、困っている人を助けるというピュアネスに焦点を絞り、甘過ぎないロマンスをまじえて、ヒロインの心の旅路をたどる。ジェンキンス監督の描写は丁寧で、見終わったときにはドラマがきちんと完結しており、そこに好感を覚える。
女心に寄ったために男目線にはテンポが緩く思える部分もあるが、DC映画の前2作に粗雑さが目立っていたことを思うと、この丁寧さはユニバース軌道修正の点で大きな役割を果たすかもしれない。
アメコミ映画の枠を超えた反戦ヒューマニズム
女性監督による女性ヒーロー映画。男尊女卑のまかり通る第一次世界大戦下の欧州で、男を知らずに育ったアマゾネス戦士ワンダーウーマンが平和のために戦う。おのずと好戦的な男性社会へ批判の目が向けられるわけだが、しかしその根底にあるのは偏狭なフェミニズムではなく普遍的なヒューマニズムだ。
理想主義者のヒロインは単純な善悪で割り切れない世の中に戸惑い、不完全で愚かな人類に失望しながらも、しかしだからこそ未来に希望があることに気付いていく。むしろ、完全無欠な「神」の方が残酷で危険だ。男にも女にも媚びないワンダーウーマン=ガル・ガデットの清々しさも魅力。それに比べ、日本版イメージソングの浅はかさよ…。
たおやかな女性性こそがスーパーヒーロー映画の救世主!
男性原理に覆われた争いの絶えない世界――。それでも救うべきだとプリンセスは立ち上がる。9.11以降、二元論で世界を捉えることへの内省から正義のありようは複雑になり、DCヒーロー系は袋小路に入っていったが、本作は突破してみせる。平和をもたらすための戦いという欺瞞を経て、世界の醜さに気づきながらも、イノセントなままでは安寧は訪れないと悟ったヒロインが、理想を失うことなく非道を諌める鉄槌を下す。元イスラエル兵士にして二児の母でもあるガル・ガドットが、この上なく美しい。男性性に抗い拮抗するフェミニズムではなく、たおやかな女性性こそ上位概念であるという価値観が、スーパーヒーロー映画の概念を変えた。
柔らかくしなやかなまま、強い。
まず、ヒーローの立ち位置がいい。ワンダーウーマンが目指すのは"敵を倒すこと"ではなく、"戦いをなくすこと"なのだ。
この姿勢はビジュアル表現にも貫かれ、動きは敏捷で無駄がなく優美。空中からの着地も、地面を揺るがすスーパーヒーロー・ランディングではなく、静かにソフトに降りる。ワンダーウーマンの母や叔母は従来の男性的な剛健さを発揮するが、ワンダーウーマンは違う。柔らかくしなやかなまま、強い。
そして今回のワンダーウーマンは、純粋さも魅力。初めて人間社会に接して、さまざまな欺瞞を一刀両断。信念に揺らぎがない。
そんなキャラクターを、ガル・ガドットの柔らかな微笑みがさらに魅力的にしている。
嘘偽りなく「DCユニバース」の救世主!
長引く『ダークナイト』の呪縛で、ガッカリ続く「DCユニバース」に救世主現る!『リトル・マーメイド』なイケメンとの劇的な出会いに続き、『モアナ』ばりに身内の反対押し切って海の向こうに行くディズニー・プリンセスっぷりに、初めてのアイスに感激の“ロンドンの休日”と、イヤミなく女子ウケ要素たっぷりなダイアナ姐さん奮闘記。その後も、『トレスポ』のスパッド含む、ボンクラ特攻隊を率いて、ドイツ西部戦線の塹壕戦に乗り込み、無双状態。絶好のタイミングで流れる“例のテーマ曲”に、一同昇天。クライマックスは、例によってダークなノリが襲いかかるが、「それまで良かったからええよ」と目をつぶってしまうほどだ。
アメコミ映画に食傷気味の人もぜひ!
スーパーヒーローの戦いに社会背景や戦争の虚しさなどをミックスさせるアメコミ映画も続くと飽きる! でも半神である最強女性ワンダーウーマンのオリジンを描く本作は、“痛快”という表現がぴったり。美貌と力強さと優雅さを兼ね備えたガル・ガドットが非常に魅力的な上、アクション演技も見事にこなしている。DCものはダークがお約束かと思いきや、ガルはコミック演技もばっちり! 初めて見た男性や未知の人間界でのダイアナの驚きや困惑を軽妙な演技で表現し、笑いを誘う。そんな彼女の恋愛対象という3歩くらい下がった役をきちんとこなしたクリス・パインも偉い! 脚本はもちろん、演出や演技、映像と隙なし!