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ラ・ラ・ランド (2016):映画短評

ラ・ラ・ランド (2016)

2017年2月24日公開 128分

ラ・ラ・ランド
Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND. Photo courtesy of Lionsgate. (C) 2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

ライター9人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.6

猿渡 由紀

ラストのおよそ10分は、何度見ても泣かされる

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

「これからもずっとあなたを愛している」。使い古された、陳腐とも取られがちなセリフも、あらゆる意味で愛が詰まった今作では、まっすぐ心に響く。最後の10分ほどのシーンを見ていてもその言葉が思い出され、毎回必ず泣かされる。
 偶然の出会いと再会、ぎこちない恋の始まり、お互いのキャリアを追う中でのジレンマ。そんなふたりと同時に、今作は、L.A.という街も優しい目で見つめていく。渋滞のフリーウェイでミュージカルナンバーをやったかと思えば、季節がないL.A.の「冬」でストーリーを始めるとは、なんともお茶目。そして何より、この街を象徴する「夢」が一貫して語られるのだ。間違いなく個人的ベストの1本。

この短評にはネタバレを含んでいます
轟 夕起夫

アカデミー賞作品賞……でなくても、いいじゃないか

轟 夕起夫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 テクニカルなあのラストシーンは開幕早々、ちゃんと予告されていた。圧巻のオープニングアクトのあと、画面に登場したジャズピアニストはひとり、カーステレオでかけていた音楽を何度も“リバース(巻き戻し)”していたではないか!

 で、その曲は、滝廉太郎の「荒城の月」をセロニアス・モンクが独創的にジャズ化した「ジャパニーズ・フォーク・ソング」。つまり、映画全体に脈打つアレンジの作法を、暗に宣言していたのである。

 そうして結果、シネフィリーにありがちな自閉の罠に陥らず、タイトロープ、危険な橋を渡り切って“ニュー・クラシック”を確立、とびっきりのハッピーサッドな余韻を、チャゼル監督は造りだしてみせた。

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清水 節

現代仕様のミュージカル映画は、切なく哀切きわまりないメタ構造

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 映画通なら全編にちりばめられた引用を語りたくなるところだが、本作の狙いはノスタルジーではない。20世紀半ばまでの優雅さや情熱を擬似的に甦らせることの不可能性をわきまえた32歳の俊英は、ジャズ同様に瀕死のジャンルを、渋滞と惰性と妥協のこんな時代の酷薄な街で、いかに現代仕様で成立させられるかという一点に懸けており、その知的な戦略と緻密な構成に瞠目した。運命的に出会った男女の恋のゆくえ。最もマジカルな至福の時は、袋とじのように封じ込められている。往年のミュージカル映画らしい「夢」の有意義な見せ方を考え抜いたメタフィクション構造が、哀切きわまりない。ミュージカルとは非現実ではなく、心の中の真実だ。

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くれい響

チャゼル監督、第二のアロノフスキー説。

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

高速道路のオープニングも、切ないエンディングも、オスカー確実なエマ・ストーンも前評判通り! 往年のミュージカルから『東京流れ者』まで、好きなものオマージュ大会をやりたい気持ちも分かる。とはいえ、同じ作り手の志を感じさせ、5年前のオスカーを賑わせた『アーティスト』と、男女のすれ違い描写が印象的だった『ラスト5イヤーズ』の存在が脳裏をよぎってしまう。しかも、中盤から後半にかけて、あまりに単調すぎることもあり、前作『セッション』に比べると、かなりモヤモヤ感が残る。総合して、『ブラック・スワン』のときと似ていることもあり、あえてデイミアン・チャゼル=第二のダーレン・アロノフスキー説を唱えたいと思う。

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なかざわひでゆき

『シェルブールの雨傘』のハリウッド的解釈でもある

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 うっとりするような夢心地でスクリーンに目が釘付けとなる。そんな経験はどれくらいぶりだろうか。L.A.のハイウェイで繰り広げられる冒頭の群衆ダンスから高揚感は最高潮。ライアン・ゴスリングとエマ・ストーンの相性も抜群。めくるめくカラフルな映像のマジックに、アラフィフのオッサンもたちまち心を奪われてしまった。
 古典的なハリウッド・ミュージカルの伝統を脈々と受け継ぐロマンティックな作品だが、しかしセンチメンタルなほろ苦さや4部構成のストーリー展開は明らかにフレンチ・ミュージカル『シェルブールの雨傘』を彷彿とさせ、同時に21世紀の同時代性も随所に散りばめられる。この懐かしくも新しい感覚がたまらない。

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相馬 学

映画だからできる、マジックの極み

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 いかにもアカデミー会員が好みそうなハリウッド内幕モノだなあ……というのは見終わったから言えることで、見ている間は、そのめくるめく映像に夢中にさせられた。

 物語だけを追えば古臭いメロドラマだが、それが端正な構図や躍動的な長回し等々、適材適所の技巧によって輝きを増す。ここぞという場面のアップも効果的で、最初はファニーフェイスのヒロイン、エマ・ストーンに、気づけば見とれていた。

 前作『セッション』は物語の緊張と熱が先行していたチャゼル監督だが、“熱血”の部分が薄れたぶん技巧が際立つ。映像はもちろん音楽も活きる映画ならではのマジックの粋。その結晶がここにある。

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平沢 薫

映画というもののマジカルな力

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ヒロインが劇中で歌う曲、「オーディション」の歌詞が象徴するように、夢を実現させようとするはみ出し者たちの集まる場所が、ハリウッドであり、ラ・ラ・ランドつまりロサンゼルスであり、アメリカであるはずで、かつてそうであったはずだし、今もそうであるはずだ、という映画なので、特殊撮影技術を使わず昔ながらの撮影法にこだわり、書き割りではなく実際のロサンゼルスの街での撮影にこだわっている。そんな"物語"と"映像の作り方"の見事な合致に目を見張らされる。そして、こうしたメッセージを持つ映画がそれが必要な今この時に登場するということ自体が、映画というもののマジカルな力を感じさせてくれる。

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山縣みどり

映画ファンである監督の好きが詰まったチャーミングな快作

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

ボーイ・ミーツ・ガールもののチャーミングなミュージカルには40〜50年代の傑作はじめとする映画からインスパイアされたシーンや撮影技術、カラー調節も多く、デイミアン・チャゼル監督の好きが詰まっているのが一目瞭然。夢を実現させたい監督に応えて歌やダンスをきっちりこなした主演二人がまた素晴らしい。ダンス場面では全身を映すし、ピアノ演奏も指のクローズアップを使った編集で誤魔化したりしないのだ。些細なことだけど、こういう作り方はすごく重要! クライマックスの受け止め方は見る人によって違うと思うが、今どきの男女にとってのキャリアにおける野心と恋愛のリアルな比重ってこうだよなと思う納得の展開でした。

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森 直人

星20個でも、100個でも、1000個でも!

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

天まで上がっていた期待値のハードル……を超えちゃったよ!! ミュージカルだけでもバスビー・バークレーからジャック・ドゥミ、『ニューヨーク・ニューヨーク』など膨大な“生きた教養”(=本気の「好き」)が詰めこまれているが、コアは「50年代ハリウッド」だと思う。ヘイズコードをすり抜けて創造された映画の歓びに、「いま」の生命を吹き込んだ85年生のD・チャゼルに喝采!

物語は単純だ。ボーイ・ミーツ・ガール。夢と恋愛。人生の光と影。それ以外に何が必要か? 余韻の深さは比類ない。エモーションと理知的な計算の共存にも心底驚嘆。“アリな程度にセルアウト”したジョン・レジェンドの音楽など細かいさじ加減まで完璧!

この短評にはネタバレを含んでいます
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