ゴースト・イン・ザ・シェル (2017):映画短評
ゴースト・イン・ザ・シェル (2017)ライター4人の平均評価: 3
「攻殻」の世界観を味わいたい新規にオススメ
“草薙素子ではなく「少佐」である”意味合いなど、オリジナルをリスペクトしながら、新規も「攻殻」の世界観を味わえる“優しい作り”を目指したアーレン・クルーガーを始めとする脚本家チームの功績は認めたい。ミスキャストと思われたスカヨハも、ちょっと大きめのUSBと化した『LUCY』より女優魂を感じるし、明らかにサービスショットと思われるガン・アクションを披露するなど、ビートたけしも『JM』での悪夢を払拭。かなり映像処理されてしまったものの、香港の街並みも楽しめる。TVシリーズのパイロット版のような感触や、格闘アクションのセンスのなさなど、手放しで喜べない部分もありながら、実写化としては及第点といえる。
スカーレット・ヨハンソンの眼差しがクール
押井守監督の「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」の冒頭、少佐が大都市の夜にダイブするシーンが美しいのは、後に彼女の意識が情報の海にダイブする時に、このイメージが重なるからだ。映画では"形"は"意味"なのだ。本作にはアニメが描いた"意識とは何か"をめぐる物語がまったくないので、アニメそっくりの映像が映し出されても見えるものは同じではない。とはいえ、監督が彼流に、アニメへの敬意を表しつつ新たなテイストを加えた映像表現に果敢に挑んでいることは見える。そしてそれらとは関係なく、スカーレット・ヨハンソン演じる少佐は魅力的。その眼差しの強さ、凛とした佇まいは、アニメ版に負けていない。
オリジナルと別物と、割り切るべし
最大公約数の観客に向けた映画を発信するハリウッドが『攻殻機動隊』をリメイクするとなれば、オリジナルの哲学性を小難しいと切り捨てることは想像できる。それを踏まえて見れば、これはこれで面白い。
実写化により未来都市の造型は立体感を増し、場面によっては『ブレードランナー』の猥雑なアジアン・テイストを匂わせる。何より、ヒロインの肉感的な存在が鮮烈さとして機能。スカーレット・ヨハンソンが映るだけで、ハッとさせられる。
ヘビーな“攻殻”フリークに勧めようとは思わない。が、オリジナルから20年以上を経た今、本作を入口にしてオリジンに触れる若い観客の存在を思うと、やはりこれはこれでアリだろう。
アニメの実写化としては十分に良心的なのだが…
役柄のイメージにさえ合っていれば、演者の人種や国籍など特に気にしなくていいと個人的には考えるので、スカーレット・ヨハンソンの少佐役には異議なし。少なくとも、ハリウッドで実写映画化するに当たっては最適な人選だったように思う。
肝心の本編だが、オリジナルから大きく逸脱していないという意味において安心感はある。ほぼ忠実に再現されたシーンも少なくない。それすなわち、独創性に欠けた単なる実写リメイクに過ぎないということでもあるのだが。
さらに、これまで押井守版に多大な影響を受けた作品は、『マトリックス』シリーズを筆頭に幾つも生まれてきたわけで、それを踏まえると本作は遅きに失した感も拭えないだろう。