ライフ (2017):映画短評
ライフ (2017)ライター7人の平均評価: 3.3
エイリアン映画のマンネリを打破する現実味
内容を聞いて“『エイリアン』の亜流か…”と軽く考えていたら大間違い。気合の入ったSFスリラーで、見ていてどんどん引き込まれた。
プロデューサーは本作をサイエンス・フィクションならぬサイエンス・ファクトと説明するが、それも納得。異星生物逃亡、通信システム故障、襲撃などなど、この状況下で起こりうる“ファクト”の積み重ね。それを徹底的にリアルに描き切る点に、このジャンルでは新鮮だ。
船内がほぼ全編無重力状態にあるという設定も珍しく、走るのではなく空間を泳いで逃げる点が面白い。無重力下の鮮血描写も残酷というより、むしろ幻想的。球状の血液がいくつも浮遊するシーンの凄みに唸った。
『ゼロ・グラビティ』的リアリズムで再構築した『エイリアン』
内容的にはほぼ『エイリアン』の焼き直し。これをオマージュと見るか、それともパクリと見るかは微妙なところだが、まあ、制作陣のやりたかったことは分からないでもない。要するに、『エイリアン』的な定番SFホラーの世界を『ゼロ・グラビティ』的なリアリズムで再構築するということだ。
エイリアンの生物学的に説得力のある生態やクリーチャー・デザインにも、その趣旨が如実に表れている。そういう意味においては、しっかりと目的を果たした作品だと言えよう。とはいえ、結果的にはほとんど目新しさもないし、あの少々狙い過ぎにも思えるどんでん返し的クライマックスも賛否が大きく分かれるはず。
監督はリドリー・スコットの大ファンなんだね!
公開から38年経っても古びない『エイリアン』の影響があちこちに見受けられる作品で、ダニエル・エスピノーザ監督がリドリー・スコット監督を尊敬しているのは明らか。ただしハリウッドにおける映像技術の進歩はめざましく、火星の土から採取した細胞がエイリアンに成長する過程や宇宙ステーションの構造などがとてもリアルだ。ネットで地球と簡単に繋がれたり、追跡チップを食べたエイリアンの場所をコンピュータで特定したり、エイリアンの凶暴性に理由がつけられている点も今どきっぽい。各キャラの描き方も丁寧だが、メインは生き残りをかけた戦いなので個々の死にはホラー要素も多く、ギョッとさせられました。
「エイリアン」の変奏として見ても興味深い
宇宙船という閉鎖空間に、人類とはまったく異質の生命体が出現。とくれば思い出すのは「エイリアン」第1作。本作の日本版予告編の「この絶望は地球に届かない」というコピーも、同作の「宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない」を連想させる。「エイリアン」を今描くならどうするか、本作はそんな視点から見るのも興味深い。異質な生命体の形状/性質をどう描くかが、まずは見もの。もうひとつの注目点は、ライフ=生命というものをどう描くか。何が何でも生き延びようとすることが、生命というもの本質なのか。そうではない選択ができるようになった人類は、生命体としてどうなのか。本作はそんな物語に踏み込んでいるようにも見える。
『コヴェナント』待ちきれない人向け
原作の持ち味が失われた『チャイルド44』に続き、またもやっちまったダニエル・エスピノーサ監督作。『デッドプール』コンビが書いたとは思えない、あまりにベタな脚本に驚きだ。『ゼログラ』テイストも入れながら、まさに「宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない」な展開は『エイリアン』の劣化リメイクにしかみえず。せめて『ゾンビランド』のときの遊び心があれば、という思いもあるが、ラストも含め、いろんな意味で「未体験ゾーンの映画」なB級感を楽しめる人向け。ライアン・レイノルズのあまりに早すぎるフェイドアウトにオトナの事情が見え隠れするなか、『サンシャイン2057』以上に大健闘なデューク真田の雄姿に、★おまけ。
既視感だらけ。良いキャストがもったいない
設定からして、おなじみ。それでも、ちょっと違った新鮮なアプローチで驚かせてくれるかと期待したら、残念なことに、既視感の連続だった。だが、「エイリアン」のようにすごく怖くもなければ、「ゼロ・グラビティ」のように感動もできず。豪華キャストが揃っているのに、キャラクターに彼らの実力を見せられる幅がなく、もったいない。あのエンディングよりも、なぜジェイク・ギレンホールがこの映画に出たのかのほうがサプライズだ。
びっくり正統派!
面白い! 序盤で『ZOMBIO/死霊のしたたり』ネタが出たところは『ゾンビランド』『デッドプール』の脚本家タッグ、R・リース&P・ワーニックらしいな~と思ったが、本編はストレートなガチ勝負。『エイリアン』直系のSFホラーとしての完成度をひたすら高めるトライアルに挑んだ趣だ。
特に6名の宇宙飛行士のサバイバル・ゲーム的なスリルは吸引力抜群で、真田広之はどこまで生き残るか?ってことだけでもハラハラドキドキ。作り手が大切にしたのはリアル感、「サイエンス・ファクト」(科学的事実)とのことだが、宇宙空間の臨場感の精度において、『ゼロ・グラビティ』が全体の水準を随分押し上げたことを改めて確認させられた。