マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー (2018):映画短評
マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー (2018)ライター8人の平均評価: 3.5
笑って泣いてスッキリ爽快!前作越えの傑作ミュージカル
ABBAのヒット曲を散りばめた大ヒットミュージカルの続編。相変わらず他愛のないストーリーではあるが、しかし舞台の映像化ゆえに諸々の制約があった前作に対して、今回は映画版オリジナルだからこその表現の自由が存分に生かされている。
しかし最大の勝因は楽曲であろう。ABBAのグレイテストヒッツ+αだった前作に比べ、今回はファンも納得の隠れた名曲のオンパレード。特にバラードやミドルテンポ曲の使い方が素晴らしく、超絶に美しく切ないメロディが観客のエモーションを掻き立てる。終盤は大号泣必至ですよ。ちょっぴりエッチなユーモアにも捧腹絶倒。とにかく、笑って泣いてスッキリ爽快な一本。前作を完全に超えました。
10年経てば、人生いろいろ。
リリー・ジェームズ演じる若き日のドナの“暴走”によって、『未来のミライ』ばりに明らかになる、シェリダン家の「ファミリーヒストリー」。人気ミュージカルの続編を、映画オリジナルでやってのける試みはスゴいが、基本、前作では流さなかったナンバーを使うため、若干盛り上がりに欠けるのは否定できない。とはいえ、シェールを『バーレスク』以来、8年ぶりに銀幕復帰させ、おっさん要因に追加のアンディ・ガルシア(役名はフェルナンド!)と絡ませるなど、小ネタが満載。監督に、あえて『マリーゴールド・ホテル』シリーズの脚本家、オル・パーカーを抜擢したのも、そのひとつかもしれない!?
シェール様が最後に舞台をさらっていきます
続編と前日譚を交互に組み合わせて物語を進める構成がうまい! 時代を超えて母ドナと同じような状況に陥った娘ソフィーが悩みと向き合うことでさらに母親を理解する展開で、前作から続くテーマである“母娘の絆”が一層強まった。アバの曲を使う制約のなかでしっかり練られた脚本が見事だ。若き日のドナを演じるリリー・ジェイムズは美人だし、歌唱力抜群で、彼女が登場すると画面が華やぐ。しかし、舞台をさらったのはソフィーの祖母役のシェールだ。ソフトフォーカスとはいえ、衰えぬエキゾチックな美貌と抜群のスタイルは、悪魔と取引でもしてるの? 前作は舞台ミュージカルの映画化だったが、今度はこれが舞台化されたりしてね。
次々起こる”笑撃”の展開に、観客の方が「マンマ・ミーア!」
前作の勢いを感じる大胆な配役と、俳優陣のはじけぶりが楽しい。
なにせメリル様演じるドナの若き日を、かなり強引にリリー・ジェームズが演じている。
だがこれが大正解。
今回はドナがいかにして3人の渋メンと恋におちたか?が中心。
知性を感じる美貌とムッチムチ・ボディを持つリリーが目の前に現れたら、男子が放っておくはずがない。
パパ候補が3人いる不埒に思えたソフィの生い立ちまで、ピュアな愛の物語にしてしまうパワーがある。
彼らをはじめとする新メンバーの目玉は、何と言ってもシェール様。
次々と超個性派キャストが上陸するギリシャの夢の島は、もはや魔界か。
細かい事には目をつむり、彼らのノリに身を委ねたい。
さらにABBA的な世界にクラクラ!
今回は、前作でメリル・ストリープが演じた人物が若かった頃、つまりABBA全盛期の70年代が中心舞台。ヒロインたちのファッションもまさにABBA風。ミュージカル仕様のシーンも増量。ABBAのヒット曲に象徴される、あの時代ならではの陽気さ、無邪気さ、今見ると気恥ずかしい感じが、さらに増幅され全面展開されて、眩しさにクラクラ。
もうひとつ注目なのは、前作でピアース・ブロスナン、コリン・ファース、ステラン・スカルスガルドが演じた、ヒロインの元恋人3人の若い頃。彼らがどんな若者だったのか、ヒロインとどんな恋をしたのかを、注目の若手男優たちが競って演じ、それぞれ別の魅力を発揮するのも楽しい。
前作よりマイルド味。でもそこがいいかも
正直に告白すると、ヒット曲をつないだ作りに強引さを感じた舞台版に乗れず、前作でメリルのハジケっぷりに“引いて”しまった。そんな身としては、今回はむしろ心地よく観ることができた。心に「受け入れる」準備ができていたこともあるが、良くも悪くもアクの強さが薄まったことで観やすくなった気がする。しかもABBAが人気を博した1970年代のドラマも描かれるので、曲と映像、時代のムードが前作よりマッチしている感じ。もちろん階段の手すりのネタなど、2作がつながるシーンも多いので、前作の鑑賞はマスト条件だが…。冒頭のアマンダのつぶやくような独唱から、ミュージカル映画の美しい基本が押さえられ、全体の流れもスムーズ。
前作のファンには、とにかくオススメ
舞台ミュージカルを基にした一作目から、映画オリジナルの物語へ。過去と現在を交錯させ、舞台となるホテルの聖地性に重きを置いたアイデアは面白い。
前作と同じく、とにかくミュージカル・シークエンスはアッパー。前回は使われていないABBAの楽曲に加え、ヒロイン、ソフィにとってのメインテーマといえる“ダンシング・クィーン”もフィーチャー。前作のファンを、しっかり楽しませる。
女子目線の物語であるのも前作同様で、男性キャラが添え物的であるのは致し方なし。前作の3人のパパ候補者に、ドナが愛した者、好きだった者、そんなに好きじゃなかった者の格付けがなされれるのは、女子目線の残酷さの表われ!?
1作目にかなわないのは、ストーリーが薄いせい
1作目は、見ている時に心が踊りっぱなしで、またすぐ2度目を見に行ったもの。残念ながら、この続編からは同じ興奮を得られなかった。一番の原因は、ストーリーが薄いこと。やりすぎなほどのハッピー感は、この映画が意図的にやっていることで、魅力でもあるのだが、話がないのにそれをやられると目障りに感じるのだ。また、1作目は3人の男たちの関係にユーモアと感動があったが、今作で感動は結末近くになるまでない。歌のラインナップもやや弱く、1作目でも使われた大ヒットナンバーが出てくる時には、そこを補うかのように派手なシーンが繰り広げられる。ただ、リリー・ジェームズの歌唱力には感心させられた。