スマホを落としただけなのに (2018):映画短評
スマホを落としただけなのに (2018)ライター3人の平均評価: 3
オフライン時代が恋しくなるサスペンス・ホラー
男性会社員がスマホを落としたせいで、彼の美しい恋人が狙われるという設定にまず惹かれる。今どきだ。『Search/サーチ』でも鍵付きSNSアカウントが簡単に開かれるのに感心したが、ITに詳しい人ならスマホから個人情報を抜き出すのも簡単なのかと背筋が寒くなる。猟奇殺人と抜き出した個人情報を使った画策に翻弄される恋人たちの困惑を巧みに組み合わせ、観客の恐怖心が増すごとにヒロインの表情がどんどんホラー化するのが中田監督らしい。SNSで繋がった友達の友達を信用したり、よく知らない人が持ってきた酒を飲むといったヒロインの甘さを女性は反面教師としてほしい。もちろんスマホは絶対に落とさないように!
端末スリラーは取っ掛かりにすぎず、実は仰天ドラマ
端末から個人情報を抜かれ、私生活が脅かされる、そんな現代の恐怖を伝えるスリラーであることは、タイトルから想像できる。が、話は想像できない方向へ。
恐るべきサイバー犯罪者は、実はシリアルキラーでもあった! マジすか!?…と驚く間もなく、意外過ぎるほど意外なヒロインの過去が明かされ、後半に進むほど、現代社会のリアルは虚構へと向かう。
思い返せば、若くて常識のある男性がタクシーの車内でブツブツ独り言を発する、最初のシークエンスからして現実味がない。1980年代の大映ドラマの虚構の再現か? はたまたリアルな恐怖を緩和すべく虚構を盛り込んだのか? いずれにしてもニヤニヤしつつ楽しんだ。
ほのぼのラブストーリーと、鋭利なスリラーの新融合を予感させ
ラブコメの香りを漂わせる冒頭のムードに、徐々に怪しい空気が侵食していく。スマホが操られる恐怖に、猟奇殺人がシンクロする予感。そして、ただならぬ闇を抱えていそうな人物、要所のホラー的描写は、控えめタッチながら中田秀夫監督の職人技が冴える。黒いロングヘアも「貞子」へのセルフオマージュのよう。
パスワード解読などのテクも、同時期公開中の『search/サーチ』と併せて楽しめ……と、何やら新感覚の面白さを予感させる前半は★★★★。が、ドラマにとって重要であるはずの部分が、どうにも蛇足に感じてしまう見せ場で印象が激変。これはこれで満足する人もいると思うが、肝心の「闇」を逆に浅くしてはいないか。