くるみ割り人形と秘密の王国 (2018):映画短評
くるみ割り人形と秘密の王国 (2018)ライター2人の平均評価: 3
マジカルなビジュアルは、さすがディズニー
バレエの「くるみ割り人形」をモチーフにしながらも、お話は別物。封建社会を生きる自立心の強い少女の冒険の物語という点では、同じディズニーの『アリス・イン・ワンダーランド』の別バージョンとも言える。
ヒロインの成長物語としてはディズニーらしい安定感があるが、冒険活劇としては少々食い足りない。意外なヴィランが現われる中盤の展開など、唐突な箇所も見受けられ、『アリス~』ほどのカタルシスがないのは残念。
とはいえ、映像のマジカルな魅力は目を奪うに十分で、異世界のセットも美術も衣装も見事に作りこまれている。チャイコフスキーのオリジナルのバレエ曲が重なると、それはいっそう映える。
お城やサーカスや玩具が好きならウットリもの
ヨーロッパのお城、お芝居の舞台装置、サーカス、ブリキのおもちゃ、ゼンマイ仕掛け---そういう系のアイテムがお気に入りなら、きっとウットリしてしまうはず。クリスマスが舞台の物語なので、美術も衣装もアンティックのクリスマス・カードのような豪華絢爛さ。その中に、ちょっとだけ中世の道化師の衣装のような暗い要素もプラス。自然界には存在しない"作り物"ならではの楽しさや、欧州の古典的デザインが、テリー・ギリアム監督の「バロン」を連想させたり。実は「くるみ割り人形」をキーワードに、玩具とバレエと映画を掛け合わせて、別のなにかを創造しようとした大胆な試みなのかも。そんな想像を掻き立てられたりもする。