search/サーチ (2018):映画短評
search/サーチ (2018)ライター6人の平均評価: 4.3
『(ハル)』から22年、スクリーン上がとんでもないことに!
『カメラを止めるな!』に続き、作り手のアイデアの勝利であり、できるだけ予備知識なしで観るべき今年の一本! 一人娘を持つ親御さんにはヤバすぎる“高校生版『ゴーン・ガール』”なストーリー展開はもちろん、パソコン通信の画像が画期的だった『(ハル)』から22年後とは思えぬ、とんでもないことが劇中で展開する。しかも、『カールじいさんの空飛ぶ家』を意識したオープニングでは、Windows XPの初期設定で表示される“草原”で幕を開け、Facebook、YouTubeといったSNS体験、そしてMac時代に突入。このように、ざっくり近代ネット史をおさらいできる構成という意味でも、18年を代表する映画といえる。
特殊な設定を抜きにしても巧い、面白い!
PCモニター上のみで映像が構成される作品は、これまでにもあったが、本作のユニークな点は主人公の機動力を最大限に伝えようとする試み。
失踪した娘を探す父親の奔走がドラマの主軸となるが、ビデオチャットやSNSを通じての情報集めはもちろん、スマホを操作しながらの行動、監視カメラ映像、はては他人がアップした暴走動画まで、とにかく多彩。PC画面に映る必然性を考慮している点も抜かりない。
ドラマの展開も意外性に富んでおり、“そこに落とすか!”という驚きが宿る。画面上のみの話という特殊性を抜きにしても、かなりよくできたサスペンス・アクション。タダ者ならぬ新鋭A・チャガンティの名は覚えておきたい。
PC画面上だけで展開する秀逸な謎解きサスペンス
パソコン画面上でストーリーの展開する映画と言えば『アンフレンデッド』が先だが、あちらが基本的にスカイプ映像だけだったのに対し、本作ではSNSからメール、YouTubeにスマホのビデオ通話まで、あらゆるツールを駆使して、消息を絶った娘の行方を追う父親の懸命な捜索が描かれる。その過程で父親の知らなかった娘の一面が浮かび上がり、思いがけない真相へとたどり着くわけだ。謎解きサスペンスとして上手く出来ているのはもちろん、現代人がいかに日頃からパソコンやSNSに依存し、周囲とのコミュニケーションが希薄になっているのかを考えさせる。ただ、思春期の少女と父親のすれ違いというのは普遍的なテーマであろう。
映画も日常生活も、PC内だけで成立する怖さ
すべてPCモニター内で展開されるこの映画。よくよく考えると、買物や銀行振込、日々の娯楽やSNSを中心にした他者とのコミュニケーション…と、われわれの日常生活の大半がネットで対応できちゃうわけで、モニター内で映画が完結するのは皮肉ながら自然なこと。その現実にちょっぴり戦慄させるのも、若き天才監督の狙いか。
パスワードを突き止めて娘のSNSにアクセスするなど、父親のスピーディなPC操作も映画のテンポに貢献し、観ていて一瞬もダレない。何より、娘の失踪事件の闇に入り込むストーリーがよく練られており、「スタイル」だけに頼っていないところが好感だ。妙に怪しげな画像など、後に生きてくる伏線もわかりやすい。
ユニークな映像手法が、ストーリーとテーマに直結
タイトルは、娘の"捜索"とネットの"検索"、両方を意味している。父親が娘の行方不明の真相を追う謎解きミステリーで、それだけで面白いのだが、その謎解きをネットですることで面白さが倍増。
"すべてパソコン画面の映像で展開する"という宣伝文句は本当で、そのうえ、それが映像手法として面白いだけではなく、ストーリーとテーマの双方に密接に結びついているのだ。
ネットのSNS、動画、検索などによる調査であることが、ストーリーに大きく絡む。そして謎解きの中で、ネットで分かること、陥りやすいことが描かれて、現在のネット社会についてのメッセージにもなっている。
抜群におもしろく、新鮮さたっぷりの大傑作スリラー
シングルファザーの主人公が、警察と協力しつつ、ソーシャルメディア、電話、メールの記録をたどり、姿を消した娘を見つけ出そうとするスリラー。PCや携帯の画面は、近年映画にたびたび登場するが、1時間40分、ずっとそこから離れず、無機質になるどころか、観る者を緊張させ、胸を締め付け、感動させるのだからすごい。初めてと言えば、メジャースタジオのスリラーで主人公がアジア人というのもそう。彼が韓国系であるべき必然性はないが、舞台はシリコンバレーなのだし、そうであっていけない理由もない。ポリティカルコレクトネスというより、アーティストとしての自由な発想でこのキャスティングをしたことも絶賛したい。