ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲 (2018):映画短評
ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲 (2018)ライター5人の平均評価: 3.2
7年のブランクを感じさせないビジュアル的面白さ
実に7年ぶりの新作。ここ数年、少しばかりシリアス・アクター化していたR・アトキンソンが60歳を過ぎてもバカを演じてくれたのが嬉しい。彼ならではの、言葉のジョークに頼らない、見た目で勝負の姿勢。そんなコメディの王道がまだ生きていることを確認できる。
顔面演技はもちろん、立ち振る舞いの気取りとオドオド感、セリフの間など、笑いのツボを心得ていて、いちいちおかしい。ボンド・ガール経験のあるヒロイン、O・キュリレンコを相手にしたボンド気取りも妙味。
アトキンソンとB・ミラーのバディ体制が強化されたのはシリーズの新味といえば新味。アトキンソンにつきあう忠実かつ律儀なミラーのトボケたキャラもイイ。
脳内を小学生に戻してくれる、ゆるギャグ健在!
睡眠薬と間違えて精力剤を飲み、クラブでオールしたかと思えば、VR訓練中にもこれまた暴走……と相変わらず、「Mr.ビーン」流れのお騒がせキャラが繰り出すユルすぎる笑いは健在。とはいえ、いつの間にハイテク化が進み、リアル・ガチなアクションが売りになってしまったスパイ映画のパロディ&アイロニーとしてはなかなかだ。前作では欠場だった相棒・ボフの復帰も嬉しいし、オルガ・キュリレンコのボケっぷりに加え、イギリス映画ファンにはたまらない俳優も、どーでもいい役で登場。なんだかんだで国民的映画な雰囲気を漂わせながら、上映時間89分ポッキリ! 脳内を小学生に戻してくれる一本である。
定番でもいい。素直に笑ってしまう唯一無二の肉体芸
じつにユルい。しかしこのユルさを快感に変換するのは、世界中でもローワン・アトキンソンくらいだろう。世間とのギャップで楽しませる彼の芸風を、最先端テクノロジーvs.アナログという構図に仕立てた時点で、もう鉄壁である。レトロなガジェットや乗り物も、近年の「007」や「ミッション:インポッシブル」が忘れた、スパイ映画の真の魅力を取り戻させる。極めつけは、唯一無二の肉体芸で、中盤のディスコダンスは60歳代とは思えないキレキレ具合。このシーンで笑いを抑えるのは難しいのでは?
たしかに「しつこい」描写もあるものの、アナログに徹する主人公の行動に、SNSやネットの煩わしさで、うっかり共感するのも事実だ。
実は今のスパイ映画に異議を唱える問題作だったりして
ひょっとして本作は、この頃の大作スパイ映画シリーズの方向性について、それでいいのかを問う問題作だったりするのかも。敵は、若いIT系企業家。だがその最先端デジタル系攻撃は、主人公には通用しない。それは、主人公があまりにもデジタルと無縁だから。そういうドラマなのだ。なので主人公の武器も古風なアナログ式。ギャグも、昔ながらの体を張った身体系。主人公は、その技能によってではなく、ただラッキーの積み重ねによってめでたいエンディングに至る。この昨今のスパイ映画の真逆を行くヒネクレぶりが気持ち良い。もちろん、いつものように「007」のパロディ満載、超豪華なカメオたちも登場、それだけでも楽しいが。
スパイ映画パロディを散りばめた安定のシリーズ第3弾
7年ぶりに復活した『ジョニー・イングリッシュ』シリーズ第3弾。サイバー攻撃によって英国秘密諜報部のスパイリストが漏れてしまう…という『スカイフォール』まんまな設定をはじめ、007シリーズなどスパイ映画のパロディが散りばめられていく。ヒロインも元ボンドガールのオルガ・キュリレンコだしね。あと、冒頭で『ユア・アイズ・オンリー』の悪役チャールズ・ダンスや『ジャッカルの日』のジャッカルことエドワード・フォックスが顔を出すのも嬉しいサプライズ。お城の塔をのぼる『黄金の眼』パロディもあり。アナログ時代の遺物であるジョニーが、デジタル時代の諜報活動に悪戦苦闘する姿が爆笑を誘う。安心して楽しめる一本。