ハロウィン (2018):映画短評
ハロウィン (2018)ライター5人の平均評価: 3.4
40年、「純粋な邪悪」を体内で熟成させた執念
途中のシリーズをすっ飛ばし、話がつながっている同名の前作は40年前。今回の物語もぴったり40年後ということで、この「時間」を共有する感覚がもたらされる。主演ジェイミー・リー・カーティスの、40年の「変化」と「変わらなさ」を確認したり、40年間、無言のまま決起の瞬間を待っていたブギーマンの忍耐と爆発力に、同情はできないものの感極まったり……と。肝心の殺りくシーンは、その容赦なさがホラーの原点を思い出させてくれる。オーソドックスだが、まっすぐな潔さが満ち、本来の目的をまっとうした感じだ。それ以上に強く印象に残るのは、親子三代、しかもすべて女性で対抗というチーム力が想定外の感動をもたらすのであった。
オリジナルファンをも唸らせるシンプル・イズ・ベスト
いろいろ賛否あった続編やリメイクを一切忘れ、素知らぬ顔して、1作目の40年後を描いてしまう潔さ! 精神病棟でのジャーナリストの挑発劇から例のテーマ曲が流れる、これ以上考えられないつかみに始まり、近所のヤバいおばさんと化していたヒロイン・ローリーの狂気と執念を経て、定番の地下室バトルへと突入する。しかも、全面協力のカーペンター監督の旧友である『ミリィ/少年は空を飛んだ』のニック・キャッスル監督が、40年ぶりにブギーマンを(数シーン)演じる、ファンサービスも! 近年の捻った設定や展開のホラーに慣れた人ほど、シンプルなスラッシャームービーの醍醐味に惹きつけられるはず!
理由なき凶行の恐怖、再び
凶行をなす者の内面を覗き込んだとき、そこに何かが見えれば、それがどんなに邪悪で捻れたものでも、理由をひねり出して納得が出来る。恐ろしいのは、覗き込んだそこに、まったく何もなかった時だ。そういう恐怖を描いたのが「ハロウィン」第1作。そして、その恐怖を甦らせるために作られたのが本作。なので、第2作以降とは関係なく、第1作に直結してその後の物語を描く。
恐怖の演出もあえて古典的正攻法。来るそ、来るぞ、来るぞ、と思って身構える時間がたっぷり取られていて、あのテーマ音楽が流れ、ああ、「ハロウィン」だなぁ、とゾクゾクさせてから、その瞬間がやってくる。そんな伝統的演出が効果を発揮している。
カーペンター版へのリスペクトは嬉しい
ホラー映画界屈指の人気フランチャイズと化した『ハロウィン』シリーズだが、久しぶりの新作となる本作は’78年版オリジナルのダイレクトな続編。2作目以降がなかったことになっているのは少々寂しいが、ジョン・カーペンター監督の第1作目をしっかりとリスペクトしたデヴィッド・ゴードン・グリーンの手堅い演出は素直に嬉しい。いまだPTSDに苦しむローリーが、兄マイケル・マイヤーズの凶行から娘と孫娘を守るために孤軍奮闘する。フェミニズムや母性愛を織り込んだ脚本は現代的だが、その一方でホラー映画の定石的な予定調和も目立つ。長年シリーズを追いかけてきたコアなファンとしては、もうちょっと新しい驚きが欲しかった
新世代のオリジナル原理主義から生まれた快作!
『ハロウィン』は、あまたのホラー・シリーズのなかでも比較的ドラマに一貫性があったが、本作は一作目の40年後を、後のシリーズを無視して組み立てる。結果、過去にない発想が飛び出し、ワクワクする快作となった。
精神病院に拘束されていた殺人鬼が40年ぶりに外界に飛び出す。40年間その記憶に苛まれてきたヒロインが迎え撃つ。高校生だった彼女も今やおばあちゃん。娘も孫もおり、サラ・コナーのように後世代に宿敵打倒を伝承しているのがオリジナリティだ。
監督も製作者も脚本家も子どもの頃に一作目を見て感銘を受けた世代。ホラーのハラハラ感はそのままに、予想外の方向にドラマを導く点に、深いリスペクトを感じる。