37セカンズ (2019):映画短評
37セカンズ (2019)ライター3人の平均評価: 4
その気になれば世界は無限に拡がる
海外で高評価を集め、結果海外セールスがいきなりNETFLIXという破格の展開。
しかし、それも納得のイマジネーションに溢れた作品。
これが難しい題材を映画というフォーマットを使ってとても軽やかに描きだしたHIKARI監督の手腕には脱帽です。
その気になれば世界はいつでも無限に拡がってくれるということを改めて教わりました。。
少女の冒険を彩るジャパニーズ・カルチャー
本作が長編デビューとなる新人監督に、ハンディキャンプを持つ主人公の健気な姿。そして、先が読めない展開と、2019年の日本映画界における『岬の兄妹』にも通じる発見とチャレンジ精神に溢れた一作である。しかも、一人の少女のアブない冒険物語を彩っていくのは、少女コミックやナイトスポットなど、今の日本を表現したカルチャーであり、予想外にポップでキャッチーな作風が強み。『パーフェクト・レボリューション』のモデルになった人物も登場するが、監督のセンスや演出力はこちらの方が遥かに上であり、海外の評価が高いのも納得!
難しいテーマを軽やかに変奏させた、前向きな明るさと演出センス
アイデアと表現。エンタメらしい作りと、社会派テーマ。その見事なバランスが、観ていて何とも心地よい映画へと結実。障がい者と「性」という超ディープになりそうな設定を盛り込みつつ、少女コミックの世界の舞台裏や、夜の街のたのもしい仲間を軽やかに描くことで、観客のドギマギ感を一気に解凍する。初の長編とは思えない、巧みに計算された対象との距離感、全体の構成力に恐れ入る。
主人公の相手をする出張ホストくんなど、短い登場のキャストからも血の通った人間らしさを引き出したのも、監督の演出力か。中でも、大東駿介が表現するさりげない優しさと包容力には、作り手の眼差しと魂が憑依したようで、不覚にも胸を締めつけられた。