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1917 命をかけた伝令 (2019):映画短評

1917 命をかけた伝令 (2019)

2020年2月14日公開 119分

1917 命をかけた伝令
(C) 2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.

ライター8人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.4

相馬 学

メンデス印の戦場体感映画

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ワンカットのサバイバル映像は評判どおりの臨場感。入念なリハーサルが行なわれたとのことだが、それにしても砲火や軍隊の動き、墜落機などなど複雑な動きをコントロールし、主人公たちの背景に、よくぞまとめ上げたものだ。
 
 いかに過酷な戦場であるかを体感させる作品としては申し分なし。若い役者ふたりから漂う、ある種の純粋さも、観客が彼らと一体になることを後押しする。

 先行部隊に所属する兄を助ける……というモチベーションは、家族の絆というメンデス作品らしいテーマ。切ない後味も符号する。とにもかくにも、これは力作。

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中山 治美

「走れメロス」+『野火』

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

仲間の命を守る為、期限までに使命を全うするシンプルなストーリーは「走れメロス」。最新技術の粋を集めた主観的視点が中心のワンシーンワンカット風映像は、塚本晋也監督『野火』を彷彿とさせる。根底にあるのは今も身近にある戦争の脅威を実感できない世代に、強引にでも戦場を体感させたいとする思い。ただ『野火』と大きく違うのは、より臨場感を与えるのに重要な聴覚と臭覚が足りない。静寂の中どこからか弾丸が飛んでくる不吉な予感とか、仲間の遺体をグニャと踏んでしまったことの嫌な気持ちとか。そういうシーン自体はある。だが大音量の音楽が効果を半減させ、戦争がドラマチックになってしまったのが惜しい。

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山縣みどり

緊張感あふれる映像と深いドラマの融合

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

カメラを複数使い分け、鮮やかな編集によって完成した1ショット撮影が緊張感を生む作品だ。実際に映像を見ても主演の二人だけでなく、エキストラまでが完璧なタイミングを要求されただろうし、相当に困難な撮影と思われる。しかし、やはりそれは二の次。仲間の命を救おうと厳しくも辛い道のりを駆け抜ける若き兵士に次々と襲い掛かる恐怖やドラマがシンプルな物語をより一層深いものにし、人間が持つべきモラルや正義について考えさせる。どんな演技も上手にこなすG・マッケイと『GOT』のトメン王子ことD=C・チャップマンの無垢にも見えるフレッシュさが生きた。M・ストロングやA・スコットが脇役という贅沢さにも驚く。

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村松 健太郎

没入感と臨場感の映画

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

パラサイト大旋風で若干、存在がかすんだ感もありますが、サム・メンデスとロジャー・ディーキンスのコンビがワンカット仕様で一気に語り切る戦争映画。
何と言っても、その没入感と臨場感は圧倒的で、戦争映画の映像としては『プライベート・ライアン』のオマハビーチのシーン以来の革新的な画作りを堪能できます。
『フォードVSフェラーリ』と共に見るスクリーンが大きければ大きいほど映える映画です。
可能な限り大きなスクリーンと優れた音響設備のある劇場でご堪能下さい。

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なかざわひでゆき

観客を戦場のど真ん中へ放り込むリアルな臨場感

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 まず、最初にハッキリとさせておくべきは、本作が決して全編ワンカットではないということだろう。あくまでも、巧いことそれっぽく編集した疑似ワンカット。それどころか、途中でショットは切り替わるし、タイムラインも飛ぶ。とはいえ、それでもなお繋ぎ目をほぼ感じさせない流麗なカメラワークと編集によって、観客を第一次世界大戦の戦場ど真ん中へと放り込み、その地獄と恐怖、悲しみと虚しさをリアルに追体験させるという意味において効果は絶大で、賞レースで高く評価されるに値する映画だと言えよう。と同時に、これに勝るとも劣らぬ戦争の悲壮感と臨場感を90年前に再現していた『西部戦線異状なし』の偉大さにも思いを馳せたい。

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平沢 薫

鮮烈な映像にただひれ伏すのみ

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 まさに、映像が語る映画。すべての光景が美しい。もちろん全編ワンカットの没入感、臨場感は見る者を画面に引き込むのだが、それだけでなく、すべての画面が美しいのだ。その美を感じた瞬間、全編ワンカットであることはもう二の次になっている。画面の光のコントラスト、構図の端正さ、抑えた色調の中に時おり差し込まれる強烈な色、それらにただただ魅了されてしまうのだ。
 そして、その映像によって語られる物語が美しい。時は現在ではなく第一次世界大戦、英国軍の名も無い若い兵士2人が、ただ仲間のために使命を全うしようと、一心不乱に進み続ける。その過程で彼らの目に映る光景の一つ一つが、鮮烈でかけがえが無い。

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猿渡 由紀

観るのではなく体感させる。戦争映画の新たな大傑作

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

最初から最後まで完全に引き込まれた。その間ずっと、目に見えぬ敵に怯え、傷の痛みや、水の冷たさを、まるで自分に起きていることのように感じ続けるのだ。一寸先に何が起こるかわからず、常にはらはらし続け、最後には感動の涙を流してしまう。フラッシュバックも、余計な説明も何もなく、その丸1日を、とにかく主人公と一緒に体験させるという手法が、すばらしい効果を発揮している。サム・メンデスも言っているとおり、生と死の分かれ目は偶然、運と呼んでもいいほど微妙なもの。これはヒーロー映画ではなく、最も極端に起こる状況を舞台に、そのことを語る作品なのである。

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斉藤 博昭

映像のテクニックと作品のテーマが究極で一致した奇跡

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

ワンショット“らしく”見せる試みは『バードマン〜』も思い出すが、同作はテクニックとして「感心」。しかし今作のワンショットは、主人公の過酷な運命への没入効果として真っ当な使い方だと「感動」。長い塹壕を歩く息苦しさ、いつ攻撃されるかわからない先々のスリル、静と動のコントラスト…。計算しつくされ、自在に流れるカメラワークに、音楽のシンクロも秀麗を極め、歴史を変える「体感映画」となった。わずかにCG調整はあるようだが、主人公のアクションなど映るものは基本すべて実写で、カオスと化す兵士たちの動き、その迫力と悲哀に全身が震える。任務に命をかけた若者の勇気と戦争の虚しさが、ここまで深い余韻を残すのも奇跡的。

この短評にはネタバレを含んでいます
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