ジョン・F・ドノヴァンの死と生 (2018):映画短評
ジョン・F・ドノヴァンの死と生 (2018)ライター3人の平均評価: 3
ドランブランド、世界に向けての一部上場
今回引用されるゴア・ヴィダルの「スタイルとは自分自身を知ること」イズムを貫くドラン。ほぼ自分ネタの棚卸しで、この豪華キャストを召喚できる神通力はやはりたいしたものだ。特にキット・ハリントンの起用は重要。元ネタのディカプリオ、明示に近い暗示のリヴァー・フェニックスも含め、『マイ・マザー』に登場したジェームズ・ディーンからのアイドル=アイコンの系譜を描く。
おそらくドランの卓越とは「仏作って魂も入れる」的な情念とデザインの融合であり、唯一無二の作家性を際立たせる根幹がブランディングなのがよくわかる。野心と純粋、器用と不器用が異なるフェーズで交錯して同居する、ある意味最も“ドランらしい”一本。
明らかにドランからリヴァーへのラブレター
ドラン監督自身、レオのファンきっかけと語っているが、劇中に「スタンド・バイ・ミー」のフローレンス・アンド・ザ・マシーンによるカバーを流し、ラストで『マイ・プライベート・アイダホ』オマージュをやったりと、明らかにリヴァー・フェニックスへのラブレターにしか見えない。主人公と母親との関係性や画や音のセンスに加え、手紙の内容などが観客に投げっ放しなところなど、ドラン好きなら手放しで褒められるかもしれないが、“理解されたい、されたくない”のあいだで揺れるイケメンスターが見た業界内幕モノとしては、あまりにありふれた作り。初の英語作品だけに、挨拶代わりの一本といったところか?
「頑張って、夢を叶えよう」というドランのメッセージ?
8歳のときにL・ディカプリオにファンレターの返事をもらったX・ドランの感動が生んだ物語らしい。彼自身を投影したルパート役のJ・トレンブ君がうますぎて、共演者が置いてきぼりに!? こまっしゃくれた語り口や上から目線な態度と、ドランの少年時代が想像できる。なりたい自分になれずにイラ立つ母親との関係性は甘ったるいが、頑張って夢を叶えることの大事さを訴えたかった(のかな?)。ルパートが回想する設定のアイドル俳優、ドノヴァンの物語は問題だらけ。性的指向に悩み、薬物に逃げるスターの設定などお約束な部分が多すぎるし、手紙の文面だけで故人の行動を全網羅するのは無理だろうと突っ込みたい場面ばかり。