イップ・マン 完結 (2019):映画短評
イップ・マン 完結 (2019)ライター6人の平均評価: 4
BLMの時代に相応しいタイムリーなテーマを孕む最終章
ドニー・イェンのライフワークとも言うべき『イップ・マン』シリーズ第4弾。これまで侵略者である日本人、旧支配者のイギリス人、悪徳資本家のアメリカ人から香港人の誇りと尊厳を守ってきたイップ・マンが、今回は愛弟子ブルース・リーに招かれて渡米。人種差別の激しい’64年のアメリカを舞台に、卑劣な白人至上主義者たちに毅然と立ち向かいつつも、人種間の壁を取り払おうと尽力する。奇しくもBLMの時代に相応しいタイムリーなテーマが見どころ。チャン・クォックワン演じるブルース・リーの再現度の高さにもニヤリ。ただし、過去シリーズ作と同様、あくまでも実在の人物にインスパイアされたフィクションであることには留意したい。
カンフー映画卒業宣言したドニーの集大成!
序章から11年経っても、武術家として披露する詠春拳の迫力もスピードも衰えを感じさせないドニー・イェン。まさに奇跡としか言いようのないアクション演技だ! シリーズを通して「カンフーは戦いの道具ではない」とのスタンスでありながら、必ず強敵を倒してきたイップ・マン師匠の今回の敵がアメリカにおける人種差別というのがタイムリー。移民排斥を唱える白人やカンフーをバカにする海兵隊員に向かって、高い道徳心を持つ師匠がチャイナ・プライドという名の蹴りを喰らわせる展開に溜飲が下がりまくる。エンディングには思わずウルッとなったし、カンフー映画卒業を宣言したドニーのシリーズ集大成としても必見だ。
激しさの後に静かな感慨で閉じる、理想的な幕切れ
直前に作られた「外伝」のマックス・チャンと比べると、50代後半のドニー・イェンが繰り出す技の迫力には衰えを感じるかもしれない。しかしその衰えも物語に忠実で、戦いの一挙手一投足に「哀愁」がにじみ出る。至近距離における技のスピード感だけは増しているようにも感じ、ドニー先生に最敬礼である。
ブルース・リーとの師弟の絆は重要ポイントながらベタつかず、あくまでも要所の戦いに持ち込むドラマに集中。サンフランシスコでイジメに遭う女子高生を守る雄姿と、香港に残してきた息子への思いのシンクロが、終盤、静かなウネリのように感動を起こすが、その描き方も意外に控えめで好印象。そこが物足りない人もいるかも…だが。
本家が魅せる最上級の落とし前
前作『~/継承』のクオリティの高さからして、どこか不安もあった4作目だが、そこは本家として、アンソニー・ウォンの別シリーズ『~/最終章』に対する意地が炸裂! 唯一無二のドニーさん=葉師父の存在感に、『ワンハリ』への回答ともいえるチャン・クォックワンの堂々たるブルース・リー芸。舞台をアメリカに移しての2作目リブート感も許せる“こちとら、落とし前つけたる感”がハンパないボーナストラックといえるだろう。予想通り、近年の中国とアメリカの関係性にも見えてくるが、そこはエンタメ。シリーズ名場面が流れるエンディングは、10年の歳月を感じさせることもあり、ファンならずとも号泣必至!
シリーズの完結と達人の終活
足掛け11年で4本の正伝と1本の外伝を生んだシリーズ完結編。池内博之、サモ・ハン、マイク・タイソン、マックス・チャンと言った強敵と戦ってきたドニーさんの最後の相手はスコット・アドキンスという、これまた信頼感抜群の相手。
ドニー・イェンとユエン・ウーピンによって作られる毎回、違う形の功夫アクションには驚かされるばかりです。チャン・クォックワンのブルース・リーはもはや名人芸ですね。
強いて言えば病に侵されているイップマンがドニーさんがキレキレに演じていることで、相変わらず圧倒的に強く見えすぎることでしょうか?
最高に満足のいく、感動的な完結編
過去3作のファンにとって完璧なフィナーレ。2作目の最後に子供で出て、3作目にも少し登場したイップマンの教え子ブルース・リーは、今作にもっと登場。そこは感慨深いが、これはあくまでイップマンの話というのはきっちりと守られる。悪役がグレーではない、完全な黒というのも常で、今回の敵はアメリカ人。人種差別はシリーズを通じて語られてきたものの、トランプ政権下のアメリカではとりわけタイムリーな感じ。アクションはまたもや息を呑むすごさ。4作が基本的に同じながらマンネリに陥らず、できればもっと見たかった(けど無理)と思わせる形で終わったところが、このシリーズのすごいところだ。