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15年後のラブソング (2018):映画短評

15年後のラブソング (2018)

2020年6月12日公開 97分

15年後のラブソング
(C) 2018 LAMF JN, Ltd. All rights reserved.

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.7

猿渡 由紀

アイドルとファンのすれ違いぶりも興味深い

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

やはりニック・ホーンビィ原作の「2番目のキス」も、オタクなボーイフレンドと、そこに不満を持つ女性の話。あのふたりが歳を取ったらこうなるのかもと考えてしまった。今作では、この年齢の女性だからこその、このまま子供を産まずに終わるのか、私は人生を無駄にしてきたのかという憂鬱が語られる。熱烈なファンが必ずしも自分のアイドルを本当に理解していないという部分も興味深い。「2番目〜」では、ボストン・レッドソックスを愛する主人公の男が「君がどんなに愛してあげてもあちらは愛を返してくれないよ」と言われていたし、そんなファンとの関係は、人気作家であるホーンビィならではの洞察か。サウンドトラックも魅力。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

どん詰まり人生は果たして仕切りなおせるの?

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

『アバウト・ア・ボーイ』などで大人になりきれない男の成長を描いたN・ホーンビィが焦点を当てたのは、大人子供な恋人に15年を捧げ、人生どん詰まりと感じる女性アニー。R・バーンが適度な悲壮感を漂わせながら、抜群のコメディ・センスを披露する。メールで心を通じ合わせたのがセレブ!という一種のシンデレラ物語だが、人生をリセットしたいと願う人には希望を与えてくれるはず。ダメ恋人役のC・オダウドは少ない見せ場できっちり役目を果たしている。音楽愛を否定された彼の「アートとは発信する側よりも受け手に意味があるのかも」との主張には色々と考えさせられた。果たして私は監督の思いをちゃんと受け止めているのかしら?

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

純粋で頼りない大人で、イーサン・ホーク、またも最強伝説

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

なかなか美味しいキャスティング。
基本的に主人公は女性のアニーなのだが、演じるローズ・バーンが良くも悪くも個性希薄タイプなので、ありがちな大人の恋と人生の悩みに等身大で共感させる。それ以上に最高なのが、イーサン・ホーク! 何歳になっても、どこか頼りなく、少年のように純粋で、しかも才能あるミュージシャンで世捨て人的な役に、これ以上ハマるスターはいないと納得。物語とともに、その素顔が明らかになっていくが、「だらしないのに、人たらし」という、これまたイーサンの得意パターンで微笑ましい限りである。
音楽がキーポイントだが、ネタがマニアに走ることはなく、大人のラブストーリーとして、じつに観やすい一本。

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平沢 薫

音楽オタクあるあるネタも楽しい

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 30代半ばも過ぎて、でも大人になりきれない男女3人の話に、音楽オタクの話を絡めてオイシサ2倍。原作は音楽マニアが主人公の「ハイ・フェデリティ」のニック・ホーンビィ、監督は人気バンド、レモンヘッズのメンバーだったジェシー・ペレッツ、かつてのミュージシャン役を演じるのが、実際にミュージシャンでもあるイーサン・ホークなので、音楽関連の小ネタにも、この世代の音楽オタクの習性のあるあるネタにも、いちいち説得力がある。
 男女3人のやりとりの軽妙さも魅力的。昨今、チャーミングなダメ男役が定番化しつつあるイーサン・ホークはもちろん、クリス・オダウドのキュートなオタクぶりもいい味。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

ニック・ホーンビィとジャド・アパトーの素敵な出会い

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

消えたロックスターと彼に心酔する音楽マニアと、その彼女。英米の田舎町を結ぶ物語を、英米を代表するこじらせキャラ・クリエイター、ニック・ホーンビィとジャド・アパトーで描く面白さ。歌声も披露のイーサン・ホークは、下衆キャラも許せるほどのハマり方で(病室のプチ修羅場は爆笑!)、日常から一歩踏み出そうとする『ラストレター』的ヒロインとの恋の行方も、どこかいじらしい。だが、2人のシーンをかっさらうのは『マリッジ・ストーリー』の子役、アジー・ロバートソン! 元「レモンヘッズ」ベーシストの監督は、TVシリーズ版「ハイ・フィデリティ」も手掛けるなど、そっち系で確実にキャリアを積んでいる。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

ウォータールーの夕暮れ、の後も

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

N・ホーンビィの原作は09年で、恋愛軸の設定は15年後(のまま)だが、映画全体の軸は「25年後」だ。ティーンエイジ・ファンクラブが“中年の危機”の青春歌となる『ヤング≒アダルト』など、90年代呪縛系は約10年前に多発したが、その主題が加齢と共に延長されたことになる。未発表デモを愛でるマニアなども世代の産物っぽいが、「止まっていた時間が動き出す」までの物語との点で普遍性を持つだろう。

家族との関係や健康など、人生後半戦では諸問題の「スタンダード」と向き合わざるを得なくなる。E・ホーク扮するタッカーは、レモンヘッズのイヴァン・ダンドのイメージでは。一度活動停止したバンドは今も活動を続けている。

この短評にはネタバレを含んでいます
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