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ベルファスト (2021):映画短評

ベルファスト (2021)

2022年3月25日公開 98分

ベルファスト
(C) 2021 Focus Features, LLC.

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

森 直人

『ケネス・ブラナーのベルファスト』と呼びたくなる

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

ブラナー自身はアルモドバルの『ペイン・アンド・グローリー』に触発されたと語っているが、ロールモデルは『フェリーニのアマルコルド』だろう。あちらはムッソリーニ台頭期の北イタリアの港町リミニが舞台だが、こちらは69年の北アイルランド紛争が背景。激動の政治性&モノクローム映像はキュアロンの『ROMA』に近いが、基本は己の原点を包み込んだ宝箱だ。

映画館で観る『恐竜100万年』や『チキ・チキ・バン・バン』といった英国の娯楽映画、テレビで楽しむ西部劇『リバティ・バランスを射った男』や『真昼の決闘』の記憶が楽しい。ヴァン・モリソンの音楽も含め、オートフィクションでは「心の籠もり方が全て」な事を示す好例。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

ケネス・ブラナー版『戦場の小さな天使たち』

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

戦争と紛争の違いはあるが、激動の時代を背景に、一人の少年の視点から故郷で生きる市井の人々をコミカルに描くテイストは、ジョン・ブアマン監督の半自伝的作品『戦場の小さな天使たち』に、とても近い。また、ケネス・ブラナー監督にとって極めてパーソナルかつ肩の力が抜けた作品ともいえる一方で、モノクロとカラーの使い分けに、計算された構図やカメラワークなど、ブラナーのフィルモグラフィにおいて、もっとも作家性を感じさせる仕上がりになっているのも、なかなか興味深いところだ。そんな変わりゆく故郷に対する郷愁とリスペクトが込められた人間讃歌。いまの世界情勢を踏まえると、もっともオスカーに近い一本といえるだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

アカデミー賞が求める要素を、奥ゆかしく備えている

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

生まれ育った愛する街が宗教の対立によって分断され、激しい戦闘にも進展するドラマは、今も世界のどこかで起こり続ける悲劇を象徴しており、時代や国を超えてアピール。それを9歳の少年の目で綴り、そこに監督K・ブラナーの深い執念が宿るのだが、その語り口は限りなく軽やかさが意識され、押しつけがましくない。カメラの動きだけとっても芸術的。
基本的に全編モノクロだが、一部カラーになるシーンおよび箇所は、そこだけ現実から逃避できる世界…という演出が巧い。盛り込まれる映画ネタも、作品全体の希望の種(たね)となって花を咲かせていく。
超級の感動を味わうというよりも、見事すぎるラストシーンとともに記憶に定着する一作。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

少年の目に映る世界は光に満ちている

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 このモノクロ映像は光に満ちていて、明るい光が繊細に描写される。ベルファストで暮らしている少年の目に映る世界なので、描かれるのは政治情勢ではなく、その時、そこに住む人々が通りでどんなことをしていたか、隣人と何を喋っていたか。彼らの言葉からタフなユーモアが滲み出る。少年が見るTV番組、家族と見に行く映画、クリスマスにもらう衣装などの細部も心躍らせる。そのように日々の暮らしを丁寧に描いて、ある時代ある場所の物語でありつつ、現在も世界中にある紛争の地で暮らす人々の普遍的な物語にもなっている。そんな映画の中で、モノクロ映像が突然カラーになる場面に、監督兼脚本家ケネス・ブラナーの想いが宿っている。

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村松 健太郎

幼い目線から

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

幼い目線から、深刻な出来事を描くという映画は過去にも多くの秀作がありました。
近々でも『パンズ・ラビリンス』や『ジョジョ・ラビット』などがあって、この映画もその系譜の一作と言えるでしょう。
ただ、大きな違いは監督のケネス・ブラナーの自伝的な要素が強いことでしょう。実際に彼が愛したであろうテレビドラマなどが挿入されているのが独特のリアリティを感じさせます。
今、大きな動きがある世界と照らし合わせて、不条理な暴力にさらされる弱い存在を改めて考えさせられます。

この短評にはネタバレを含んでいます
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