シーフォーミー (2021):映画短評
シーフォーミー (2021)ライター4人の平均評価: 3
ハイテク版『暗くなるまで待って』×『ドント・ブリーズ』
視力を失ったスキー選手の女性が、ペットシッターのアルバイトで人里離れた山荘の留守番をしていたところ、そこへ侵入した3人組の強盗犯と対峙することになる。さながら『暗くなるまで待って』×『ドント・ブリーズ』。そこへ、視覚障碍者用のスマホ・アプリというハイテク・ガジェットが投入される。元軍人である担当ヘルパー女性の機知に助けられ、目の見えないヒロインが屈強な男たちに立ち向かうサバゲー的なスリルが最大の魅力。惜しむらくは、日系人監督ランドール・オキタの折り目正しい演出に新鮮味がなく、いまひとつ盛り上がりに欠けること。実際に視覚障碍者である主演女優スカイラー・ダヴェンポートの芝居には説得力がある。
過剰な憐みは、やめてちょうだい!
目の不自由な女性を主人公にした、『暗くなるまで待って』の変奏バージョン。ヒロインが若く、未成熟で、犯罪をもためらわない点が面白い。
“誰も視覚障がい者を犯罪者とは思わない”とうそぶきつつ高級ワインをためらいなく盗もうとする主人公。そんな姿勢から、彼女のような人間に対する行き過ぎた憐みや、見下しといった社会の現実が見えてくる。
主人公が善人であって欲しい観客には、本作は受け付けられないかもしれない。が、強盗犯一味と攻防を繰り広げる彼女の行く末が気になり、最後まで目が離せない点がスリラーとしての妙。ヒロインの視覚をスマホカメラ越しにサポートする電話オペレーターとのかけ合いも面白い。
典型的でない主人公が思わぬ方へと進ませる
90分の間に予想しなかったことが次々に起こる、終始緊張感に満ちたスリラー。家に悪者が侵略してくるパターンは過去にもあるものの、主人公ソフィーが悪いことをする可愛げのない女性であることが、今作を違ったものにしている。こんな主人公を応援できないと感じる人もいるかもしれないが、思わぬ展開はそのおかげで起きるのだ。主演のスカイラー・ダヴェンポートは、映画の主演が初めてとはとても思えないパワフルな演技を見せる。ソフィー同様、大人になってから視覚障害者になった彼女がパーソナルなものを持ち込んだことで、この娯楽作にリアルさがプラスされたのは間違いない。
ヒロインが生きる意欲を取り戻す成長物語でもある
視覚障がい者のヒロインを描くサスペンスは多々あるが、本作は主人公が視覚サポートアプリ"シーフォーミー"を使うところがユニーク。スマホのカメラで周囲を撮影し、遠くにいるサポーターがそれを見ながら音声で協力し、二人三脚で敵に対峙することになる。もう一つのポイントは、主人公がいわゆる善人ではないこと。彼女は敵とも交渉し、タフに生き延びる方法を探していく。
主人公ソフィを演じるスカイラー・ダヴェンポートは、ヒロイン同様、成人後に視力を失った経験を持ち、アニメの吹替等で活躍する女優。ソフィの不屈の精神には、彼女自身の気概が反映されているのに違いない。