ザ・フラッシュ (2023):映画短評
ザ・フラッシュ (2023)ライター7人の平均評価: 4.3
ヒーロー映画らしからぬ(?)ドラマの妙味
ジャスティス・リーグの青二才的ポジションを担う(?)青年バリーが主人公だけに、これまでのDC路線とは趣が異なる。
過去の不条理な悲劇を変えたいバリーの奔走はマルチバースへとおよび、SF色が濃厚に。ヒーローvsヴィランの図式を奔走の付随要素にとどめ、過去を克服する主人公の成長のドラマに主眼を置く。結果、スリリングなエンタテインメントでありながら、笑えて泣けるエモさが宿った。
ふたりのバリーを演じ分けたE・ミラーの妙演はもちろん、スーパーガール役のS・カジェの凛としたたたずまいも魅力。歴代DC作品を俯瞰したお楽しみ的描写には、お得感アリ。
DC実写映画&ドラマの長い歴史への敬意が感じられる
父親が妻殺しの罪で投獄されたフラッシュことバリー・アレンは、自らの特殊能力を使って過去へタイムトラベルし、最愛の母親を救って歴史を修正しようとしたところ、不測の事態を招くことになる。パラレルワールドにマルチバースにタイムパラドックスにと、既視感のある設定が重なって若干食傷気味にもなるのだが、しかしシンプルでありながらも捻りを効かせた中盤からの展開はなかなか面白いし、なによりもDC実写映画&ドラマの長い歴史の積み重ねを実感させるオマージュの数々には思いがけず感動する。そこはマーベルが真似のできない強みであろう。1人2役(?)に挑んだエズラ・ミラーの巧みな演じ分けも見事だ。
かなり良く出来た映画。ファンサービスもたっぷり
DCスーパーヒーロー映画の中ではかなり良く出来た作品。主演のエズラ・ミラーは私生活でいろいろ問題を起こしているが、この映画でやったことはすごい。すべてのシーンに出ているばかりか、事実上のひとり二役を見事にこなし、ユーモア、感情的なシーン、どれも見事にこなしている。せりふのタイミングもばっちり。冒頭の派手なアクションは必ずしも斬新ではないにしろ楽しいし、バリーが過去にタイムトリップして自分に会うところはチャーミング。ただ、話が大きくなる後半は、盛り込みすぎでやや散漫になる感じ。ファンサービスはたっぷり。エンドクレジットを含め、これまでの映画を見てきた人には嬉しいサプライズがあちこちにある。
アメコミ映画史が始まった
本作を見て感じたことはアメコミだけでなくアメコミ映画にも歴史と呼べるものが出来つつあるのだなということです。必ずしも成功ばかりではなかったかもしれませんが、それでも積み重ねて来たものの大きさを実感できます。一方”フラッシュ”の物語としては駆け足気味ではあるものの”フラッシュの要素”を巧みに抑えた映画になっていて、入門編でありながら、本格的な”フラッシュの映画”になっていてそれもまたお見事でした。ガジェット的な面白さもしっかりあり、復活キャスト陣の存在感も抜群です。今年を代表する大作と言って良いでしょう。
ここまでお墨付きなのも頷ける!
こちらも“愛する人”を救って運命に立ち向かうヒーローの話だが、『バンブルビー』の脚本家による、こちらのマルチユニバースはビートルズ不在の『イエスタデイ』ばりに強烈な小ネタ満載。しかも、『IT/イット』のアンディ・ムスキエティ監督らしい少年時代のトラウマ描写や絶妙なギャグセンスが冴えまくる。それを担ったエズラ・ミラーもバリー・アレンを愛らしく演じるなか、中盤の回り道な展開が失速感に繋がった点は悔やまれる。とはいえ、既出のヒーロー共演のほかにも、本家が二次制作をやってしまうような掟破りな展開もあり、ジェームズ・ガンにスティーヴン・キング、トム・クルーズまでがお墨付きなのも頷ける!
愛すべきヒーローとなる条件を最適な映像と演技でクリアしていく
ますます見せ方が“複雑化”するヒーロー映画にあって本作はアクション場面が、入り組んだことやってても、そして主人公が超速にもかかわらず、見やすく設計され、そこだけで好感度アップする。フラッシュの目線と同一化するのは、シンプルかつ的確な演出に拠るところが大きいかと。設定もやや複雑でありつつ「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に慣れ親しんだ人はすんなり入り込めるはず。「ショーシャンクの空に」など引用も幅広い。
ギャグ部分は好き/嫌いが多少分かれるかもだが、エズラ・ミラーの愛すべき2役演技で温かく見守り、共感してしまうポイント多数。私生活はともかく、軽やかさと重厚さ、表現力の柔軟性は同世代の中で別格か。
爆笑!感動!そして小ネタも詰まってる
笑って、泣けて、ココだという時に痛快なポップソングが鳴り響く。主人公たちは大義名分のためではなく、自分の気持ちのために動く。ときどきギャグがベタすぎる。そんなジェームズ・ガン監督の大絶賛も納得のテイストでありつつ、コミック『フラッシュポイント』を踏まえたストーリーはワザあり。さらに、同じセリフが別の形で繰り返されるなど、脚本の妙技でも唸らせてくれる。
そして楽しいオマケが、DC映画には珍しい、ネタバレ厳禁の小ネタの数々。それもコミック由来ではない映画ネタが中心で、分かりやすい。予告編にも登場したティム・バートン監督版バットマンの小ネタも満載なので、あのバットマンのファンも必見。